遺言書作成やデジタル遺言、財産の分配方法まで、死後の不安やトラブルを未然に防ぐための準備を徹底解説。おひとりさまならではの認知症や借金問題にも対応した実践的なアドバイスを、相続に詳しい天野大輔氏に聞いた。

なぜ50代から相続の準備をすべきか

近年、高齢者の「おひとりさま」が増えています。結婚せず独身のまま生涯を終える、離婚や死別後に再婚しない、親や子どもがいないなど、最期を一人で迎えることは珍しくありません。

資産をすべて使い切って亡くなる人は少なく、残された財産は誰かに引き継がれるか、引き継ぐ人がいなければ最終的に国庫に帰属します。自分が築いた大切な資産ですから、国ではなく自分が望んだ相手に譲渡したいと思う人も多いでしょう。

相続のルールでは、配偶者は常に法定相続人(民法で定められた財産を相続できる人)です。そして、子どもが第1順位、親が第2順位、兄弟姉妹が第3順位となり、上位の順位が優先され相続人になります。たとえば、配偶者と子どもがいる場合はこの二者が相続人となります。配偶者がいて子どもがいなければ配偶者と親が、親もいない場合は配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。常に上位の順位が優先される仕組みです。

また、第1順位の子どもがすでに亡くなっていて孫がいる場合には、孫が代襲相続(代わりに相続人になること)します。孫が亡くなっていればひ孫が相続人になり、第1順位の代襲相続は代が途切れるまで続きます。第2順位の親が亡くなっていて、祖父母がいる場合は祖父母が相続し、第3順位の兄弟姉妹が亡くなっていて、その子どもがいる場合は甥・姪が代襲相続します(注1)。相続人がいないと思っていても、疎遠な兄弟姉妹やその子どもが相続権を持つことがあるのです。

法定相続人がいなければ、財産は「特別縁故者」に分与されるか、先述したように、最終的には国によって管理されます。特別縁故者とは生前親しくしていた人を指し、家庭裁判所の判断で財産が分与されます。ただし、申し立てをしたからといって必ずしも財産分与が認められるわけではありません。

意思に反する相続を防ぐためには、自分の状況を見直し、計画的に準備することが重要です。家族構成や親族との関係性を把握し、自分の相続人が誰になるのかを明確にしておきましょう。

さらに、遺言書を作成して自身の意思を明確に伝えることが大切です。遺言がない場合、資産の分配が疎遠な親族や第三者の判断に委ねられ、望まない形で相続が進む恐れがあります。一方、遺言書を作成しておけば、特定の人物への財産承継や慈善団体への寄付など、自分の希望どおりに資産を活用することが可能です。

50代は、相続準備をはじめるのに適したタイミングです。親の相続問題に直面した経験を持つ方も多く、将来に備える意識が高まる時期ともいえます。遺言は何度でも書き直せるため「早すぎる」と心配する必要はありません。