「仕事をする気力も体力もありません。夢も希望もありません」

以上のことから、今ある貯蓄(3500万円)を取り崩していけば何とかなりそうだ、という見通しが立ちました。しかし内山さんの顔は曇ったまま。小さくつぶやくような声で言いました。

「自分でも頭の中では『大丈夫。お金は足りるはず』と思ってはいます。ですが、この先も収入はほとんど見込めず、お金がどんどん無くなっていく状況にあると『もしも今あるお金が底をついてしまったらどうしよう』といった不安や恐怖が勝ってしまうのです……」

そこで筆者は次のような質問をしてみました。

「アルバイトを再開するご予定はないのでしょうか? 月数万円でも収入が得られるようになれば、その分、お金の見通しは改善します」

カプチーノ
写真=iStock.com/Margaryta Basarab
※写真はイメージです

すると内山さんは申し訳なさそうな表情になりました。

「甘えていると言われてしまうかもしれませんが、仕事をする気力も体力ももうありません……。これから先も特に夢も希望もありませんし、結婚して家庭を持つこともないので、仕事をするモチベーションはなかなか湧いてきません」
「では障害年金を検討するのはどうでしょうか。今まで抑うつなどで心療内科や精神科を受診したことはありませんか?」
「いいえ、そのような病院を受診したことはありません。確かにお金の不安はありますが、抑うつがそこまでひどいわけでもないので、今のところ病院を受診する予定もありません」
「それならば、もし将来的にお金が底をつきそうになったらご自宅を売却して現金に換えることも検討しなければならないかもしれません。ご自宅を売却すればお金に少しは余裕が出てくることでしょう」

この話に内山さんは黙ってしばらく何かを考えた後、静かに口を開きました。

「できることなら自宅は売却せず、今の家で最後を迎えたいです。何か他によい方法はないのでしょうか……」
「う~ん、そうですね……」

今度は筆者が考え込んでしまいました。

今までの内山さんの発言から、次のような不安があることが推測できました。

・お金が無くなっていくことへの不安
・収入が無いことへの不安

これらを改善するために、今あるお金を別の形に変えてみるのはどうか?

筆者はそう考え、次のような提案をしてみました。

「お金は使ったら使った分だけ消えていき、いずれは無くなってしまいます。それならばいっそのこと不動産を購入して家賃収入を得るのはどうでしょうか。不動産なら物として残りますし、価値がゼロになってしまうことはまずありません。最終的には不動産を売却して現金に換えることもできます。家賃収入が入ってくることで、収入が無いことへの不安も少しは和らげられるかもしれません」