2つの物件の購入費用は約2830万円、手取り額は月計14万4850円
資料を見た筆者は疑問に思い、T氏に質問をしました。
「物件②は購入費用に対して家賃がやや低め(7万4000円)な気もするのですが……」
内山さんも同じ疑問を持っていたようで、筆者に同意するかのように頷きました。
「確かにそう思われるかもしれませんね。まずお二人にご確認いただきたいのは『リースバック物件ならどれも割安で家賃が高いというわけでは無い』ということです。数あるリースバック物件の中からより良い物件を探す必要があるのです。そのようななか、物件②をおすすめする理由は、市場価格と比べ割安になっているからです。私の市場調査の結果、家主が退去した後に売りに出す場合、リフォームをしなくても1600万円程度で売却できる可能性が高いと判断しました。つまり物件②はお買い得な物件だと言えるのです。売却した後は別のリースバック物件を購入することになりますが、残ったお金は内山さんのご自宅のリフォーム費用などに充てることもできるでしょう」
「なるほど。そのような理由があるのですね。物件費用と家賃だけに注目していましたが、将来の売却も視野に入れているのですね」
その説明を聞いて筆者は納得しました。
2つの物件の購入費用と諸経費で約2830万円。この金額であれば貯蓄は約670万円残るので、一時的な支出にも備えることができます。
月の手取り額は合計で14万4850円。これだけあれば、国民健康保険料の増額分と税金もまかなえる見通しが立ちました。仮に、この収入を内山さんの余命(82歳)まで継続して得られると仮定すると、14万4850円×12カ月×22年=3824万円となり、2つの物件購入に充てた額より1000万円も増える計算になります。
T氏のおかげで筆者のさまざまな懸念が払しょくされました。
内山さんも収入が得られる見通しが立ったことで、ほっとした表情になりました。
2回目の面談から数日後、内山さん、T氏、筆者の3人は直接現地に赴き、物件の外観を見るとともに、周辺環境も確認しました。
現地調査の結果、特に気になる点はなさそうだということで、内山さんはそれぞれの物件を購入することになりました。
物件購入後、T氏は内山さんに言いました。
「もし住人が退去することになった場合、新しい入居者を募集する間は家賃収入が入ってきませんから、すみやかに売却し次のリースバック物件を買い替えるようにした方がよいかもしれません。仮にそのようなことになったとしても、きちんとお手伝いしますからご安心ください」
「はい。頼りにしています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
初回の相談時には見られなかった明るい表情をする内山さん。それを見て筆者も嬉しく思いました。