すし店の倒産が増えている。東京商工リサーチによると2023年度のすし店の倒産は前年度比で倍増していた。特定行政書士の横須賀輝尚さんは「4つの理由があると考えられる。人手不足、仕入れ価格の高騰、大手チェーンの展開、そして消費者ニーズの変化への対応が遅れたことだ」という――。
マグロのすし
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すし店倒産の背景にある4つの理由

すしは日本を代表する伝統的な料理文化であり、世界的にも高い評価を受けています。しかし近年、すし店の経営を取り巻く環境は厳しさを増していると言ってよいでしょう。東京商工リサーチによる2023年度の「『飲食業の倒産動向』調査」によると、すし店の倒産が前年度比で倍増しているのです。

これらの背景には主に4つの理由があり、その窮状を表していると言えます。大きな要因のまず一つが、優秀なすし職人の確保難と人件費高騰による人件費負担の大きさです。

すし職人とは、まさに匠の技が求められる職種です。長年の経験と、師匠から受け継がれた卓越した“わざ”がすしの味を左右します。そのため、すし店が腕利きの職人を抱えられるかどうかは、経営の命運を分ける最重要課題となります。

すし職人を志す若者は減り、職人の高齢化が進む

ところが実際の現場では、深刻な人手不足に見舞われています。年々、すし職人を志す若者が減少の一途をたどり、熟練した職人の高齢化が進んでいるのです。背景には、修行の過酷さと就労環境の劣悪さがあります。すし職人への入門を控える傾向が強まっているのです。

「朝4時に出勤し、夜は11時近くまで働く。休みも週1日あれば良い」。かつての名店というものはこういうものでした。長時間労働と低賃金に加え、上司からの叱責もつきものだったわけです。このような現実が、若手の職人離れを後押ししているといえます。あわせて、近年のコンプライアンス重視の経営を求める環境も、こうした「修行」的な働き方が難しくなっていることの一因と言えます。

そして、求人難から、優秀なすし職人の獲得競争が激しくなり、給与水準の高騰を招いています。東京の高級すし店に勤める一流職人の年収は800万円を超すケースも珍しくありません。人件費の高止まりは、すし店経営を直撃しているのです。このように人材確保のカギを握る人件費コストの高止まりから、すし店経営は立ちゆかなくなりつつあるのです。