ハンバーグチェーン「びっくりドンキー」は、2020年から利便性の向上を目的に木製のメニューをタブレット端末に完全に置き換えた。だが、現在はタブレットと紙のブックメニューの両方をテーブルに置いている。なぜ一度は廃止した紙のブックメニューを復活させたのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんが運営会社のアレフに聞いた――。(前編/全2回)
かつてびっくりドンキーに置かれていた木製の巨大メニュー。※現在の内容と異なります。
画像提供=アレフ
かつてびっくりドンキーに置かれていた木製の巨大メニュー。※現在の内容と異なります。

なぜ「びっくりドンキー」は好きなレストランの常連なのか

ハンバーグ専門店として全国に店舗がある「びっくりドンキー」(国内店舗数343店、2024年2月末時点)は、各社が行う「好きなレストランチェーン調査」で毎回上位に入る人気店だ。国内47都道府県のうち、鳥取県と島根県を除く全国各地に店を展開し、本拠地の北海道に次いで近畿圏や首都圏でも人気が高い。

外食産業が大打撃を受けたコロナ禍当初の2020年は、外出自粛や営業時間短縮の影響で苦戦したが、同年秋以降は回復。コロナ明けの現在も好調を維持する。運営する株式会社アレフ(本社:北海道札幌市)は、「2019年の同期比で売上高は121.7%、1日1店当たり来客数は105.8%と、コロナ前よりも多くの方にご来店いただいています」と話す。

前身の店である岩手県盛岡市「ハンバーガーとサラダの店・べる」が開業したのは1968(昭和43)年だ。なぜ半世紀を超えても人気が続くのか。東京都内の繁盛店を訪れて責任者に話を聞いた。前編・後編の2回に分けて紹介したい。

常連の客ほど、ワンプレートで頼む

「今年で創業55年となり、社内でもびっくりドンキーの特徴をあらためて整理しました。大きく5つに分けられると思います」

FC店舗運営部部長の堀雅徳さん(アレフ びっくりドンキー店舗運営本部)はこう話す。埼玉県出身の堀さんは、宝塚、加古川、八尾など関西地方の直営店店長を歴任し、現職の前は西日本店舗運営部部長を務めた。堀さんが語るびっくりドンキーの5大特徴は次のとおりだ。

(1) 創業当時から「ハンバーグ」が看板商品
(2) 料理を木の皿にのせた「ワンプレート」で提供
(3) 食材への「びっくり」なこだわり
(4) コーヒー、ビールは「自社製造」
(5) 「時間帯別に楽しめる」メニューがそろう

それぞれ簡単に説明しよう。現在、飲食店は専門型の時代だ。和食・洋食・中華の総合型で人気のファミレスもあるが、全体的には(1)のように、何かに特化した専門店が強い。

また(2)は、1つの皿にライスやサラダを盛り合わせたワンプレートで料理が提供される。競合の多くは鉄板での提供でライスやサラダは別々だ。びっくりドンキーにも鉄板はあるが注文数は少ない。「常連のお客さまほど、ワンプレートで頼まれます」(堀さん)。

(3)は、「たとえば安心・安全への追求です。ハンバーグの肉はビーフポークですが、自社の厳しい基準で飼育された牛や豚を国内外の契約農場から調達しています。ライスは国内産で、20年以上前から農薬使用を除草剤1回だけに制限したお米を使います」と話す。