顧客を置いてきぼりにはしない
かつてファミリーレストランは、日付をまたいだ深夜営業も人気だった。それが利用時間帯の変化や従業員の働き方改革などで難しくなり、実施する店が減った。
びっくりドンキーでは「関町店」(東京都練馬区)が深夜2時、八王子店が3時まで営業するが、大半の店は午前0時で営業終了だ。代わって朝の8時から営業する店が増えた。
「コロナ前から深夜時間帯のご利用は減っていました。一方で“朝活”という言葉があるように朝の時間帯に注目しており、コロナ禍で背中を押されるようにモーニングメニューを導入したのです」(堀さん)
くわしい内容は後編で紹介するが、2020年4月に宮城県内の7店舗で朝8時開店に変更してモーニングメニューを導入したのを皮切りに、実施店舗を拡大させてきた。
同年には別業態の「ディッシャーズ」(Dishers)というブランドを立ち上げた。
「『びっくりドンキーに興味があっても女性1人では行きにくい』という声にも応え、ディッシャーズでは1人客用の座席も設けました。お客さまご自身でタブレット端末を使い、ひとつのお皿の中で自由にメニューをカスタマイズできます」(同社)
ディッシャーズのタブレットが形を変えて、びっくりドンキーにも導入されているのだ。だが、前述したように顧客を置いてきぼりにはしない。
びっくりドンキーの「ドンキー」はロバの意味。創業者の庄司昭夫氏が「優しいまなざしで人々の暮らしに寄り添うロバのように」という思いを店名に込めた。DXでも時に立ち止まるのはその意味だろうか。(後編に続く)