公明党にとって、自民党との選挙協力に都合がいいのは今年秋だと説明したものだが、岸田首相に解散してほしくないというのが本意だったのだろう。

衆院3補選全敗を受け、自民党内には岸田首相は政治とカネの問題で政治不信を招いた責任を取るべきだとの声も出ている。首相は4月24日の参院予算委員会で、劣勢が伝えられた補選情勢について「私への判断も含まれる」との認識を示していた。

世論は「9月の総裁任期まで」が60%

岸田首相が総裁選に不出馬という状況は、来年の参院選に勝てず、「衆参ねじれ」を生じかねないと判断された場合である。

3年ごとの総裁選は、10カ月後に参院選が行われるというめぐり合わせになる。参院選から逆算して総裁選を戦うことにもなる。

自公連立政権の場合、衆院選で大敗して過半数割れしても、国民民主党や日本維新の会を連立政権に取り込むことで再スタートを切れるが、参院選で敗北する(自公両党で19議席以上減らす)と、即ねじれが生じてしまう。そして政治が動かなくなる。衆参ねじれに苦しんだ安倍、麻生両氏の首相経験者らは、参院選を意識して総裁を交代させてきた。

21年のコロナ禍にあえいだ菅義偉前首相がその例だ。自民党が4月の衆参補選・再選挙で0勝3敗を喫し、その後も内閣支持率が低迷し、6月の静岡県知事選も推薦候補を落とした。そこで安倍、麻生両氏が7月末に会談し、「菅首相では、22年の参院選に勝てない。衆参ねじれになりかねない」「ここは岸田(無役=当時)で行こう。場合によっては菅の不出馬もある」との認識で一致し、ここから「菅降ろし」が始まる。8月の横浜市長選の敗北を経て、岸田氏が総裁選出馬を表明し、9月の菅首相の出馬断念につながっていった。

岸田首相の場合、こうした絵が描け、進退を相談できるのは麻生氏くらいではないか。今後、その決断の指標になるのは、内閣・自民党支持率の推移、衆参両院選の情勢調査、静岡県知事選(5月26日投票)など地方の首長選などの結果になるのだろう。

5月6日のJNN(TBS系)世論調査(4~5日)では、次期衆院選で「政権交代」を望む人が48%で、「自公政権の継続」の34%を上回った。岸田首相にいつまで続けて欲しいか聞いたところ、「9月の総裁任期まで」が60%、「すぐに交代して欲しい」が27%だった。

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