派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で処分された安倍派・二階派の議員ら39人は今後、どんないばらの道を歩むのか。元自民党参議院議員で大正大学准教授の大沼瑞穂さんは「岸田首相は今回、安倍派5人衆の世耕氏を追い出し、松野氏、萩生田氏を救う形をとった。この判断の裏には次期総裁選を念頭に置いた党内の権力闘争がある」という――。
2023年2月18日、松野内閣官房長官記者会見
2023年2月18日、松野内閣官房長官記者会見(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

政界を揺るがした裏金問題は、自民党の党紀委員会による処分決定で一定のけりをつけた形だが、「離党勧告」処分を受けた安倍派幹部議員と、それを免れた同派議員とでは今後、その歩む道は大きく異なっていく。

1:離党宣告とは露ほども思わなかった安倍派幹部

政界を揺るがしている「裏金問題」。検察は、還付金(キックバック)の不記載が高額だった中堅の3人(池田佳隆氏、大野泰正氏、谷川弥一氏)を起訴した。結果的に政治資金収支報告書への不記載が「4000万円以上」という金額が起訴の基準となった。この金額は、2022年末に議員辞職し離党した薗浦健太郎元衆議院議員が政治資金規正法違反で略式起訴された時の金額がひとつの目安となったと言われている。

国民からすれば、この3人は裏金づくりの主犯ではなくスケープゴートにされただけで責任を取る幹部は他にいるはずだとの見方が強まる中、自ら手を挙げ役職を降りた安倍派幹部たちは「起訴されていない」のであるから、役職辞任で責任は十分に取ったという認識だったのだろう。離党する者や議員辞職する幹部はいなかった。

世耕弘成経済産業大臣(当時)
世耕弘成経済産業大臣(当時)(出典=経済産業省ウェブサイト/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

3月半ばに実施された政治倫理審査会において世耕弘成参議院議員が「昨年12月に政治的、道義的責任を取る意味で参議院幹事長を辞任した」と述べたことは、すでに役職辞任によって政治的、道義的責任を取ったのだから、それ以上の責任を取る必要はないとの認識の表れだったとも言える。

その証拠に、世耕氏は昨年末に参議院幹事長のポストを降りた後も、その後任には安倍派の自分の部下や自分の思い通りになるパペット(操り人形)を幹事長ポストへ置くべく画策してきた。そのため参議院幹事長のポストは衆議院側とは異なり年をまたいで2024年1月末にようやく決まることになったが、そんな抵抗もむなしく、参議院幹事長には岸田文雄総理側近の旧宏池会の松山政司氏が就任した。

その後も世耕氏は、参議院の安倍派(清風会)を期別に集めて懇親会を精力的に行い、「せいぜい役職停止1年だろうから、1年経ったら戻ってこられるので、一致団結みんなでがんばっていこう」と声がけしていたという。この時は自らが離党勧告されるなどとは露ほども思っていなかったはずだ。

塩谷立安倍派座長
塩谷立安倍派座長(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

塩谷立安倍派座長に至っては、「自分は年長者という理由だけの座長で、実権も決定権もないのだから、処分などされるはずもないし、されるべきでもない」と強く信じていた節がある。そのため、離党勧告処分に対し「心外だ」として、党紀委員会に再審請求を検討しているという(2024年4月8日現在)。

塩谷氏は弁明書の中で、「私が座長を務めたのは令和5年8月から本年2月1日までの5カ月余りです。令和4年の打ち合わせ時には、私は下村博文先生と共に会長代理に就いていましたが、そもそも、会長代理は、会則に規定された役職ではなく、清和研の運営に関する決定権限がありません。当時の清和研は、会長不在で決定権限を有する者がいなかったことから、複数の幹部で協議して運営を決めていました。ですから、還付への対応の議論に加わった者の責任の有無は措くとしても、議論に加わった他の方と比較して私の責任の方が重いということはありません」として、「党員資格停止」にとどまった他の衆議院の安倍派幹部たちとの処分の差を不服としている。

しかしその後の政倫審でも安倍派幹部から長年にわたる組織的な裏金づくりが、いつから、どのように始まり、その違法性を誰が気づき、還付金(キックバック)をやめようと話した安倍晋三元総理の遺志を誰がどのように覆したかは明らかにならず、安倍派幹部は全員が「他人事」のようにふるまう始末であったため、国民からの安倍派幹部に処分を科すべきとの声は日に日に大きくなっていった。一部世論調査では、離党などの厳しい処分をすべきとの声は84%にも上った。

結果、岸田総裁含む執行部は、衆議院側の責任者として安倍派座長であった塩谷氏、参議院側の責任者として40人ほどを取りまとめていた参議院安倍派である清風会会長であった世耕氏の2人を、「除名」の次に重い「離党」勧告とし、裏金問題の責任を取らせたのだ。

塩谷氏の言い分には、多少同情の余地もあるが、もし結果責任を取る気がなかったのであれば、そもそも座長を引き受けるべきではなかった。本人の言う通り安部派内での実権はなかったのだろうが、実権の有無に関係なく、組織として責任を取るのがトップの仕事であるということを認識できなければ、どんな組織のトップも務まらない。それが世間の「常識」である。

また、塩谷氏が弁明の中で、岸田総理の責任を追及するというのは筋が違う話だ。最大派閥の安倍派による組織的な裏金づくりこそが国民の自民党への不信感の最大要因という認識、その安倍派の幹部だったという認識が全く欠けているからだ。無派閥の議員が言うのであればまだ理解できるが、まさに「おまいう」だ。