「総裁選で現職が負けたのは1回」

岸田首相が、解散・総選挙を経ずに9月の総裁選に臨み、再選されれば、その勢いを駆って10月にも衆院解散を断行するという考え(プランB)が、替わって浮上している。

麻生氏が当初から「これまでの総裁選の歴史で、現職が負けたのは1回しかないのだから」と岸田首相に提言しているシナリオだ。その1回とは1978年の総裁選で、福田赳夫が大平正芳に敗れたケースだが、それほど現職の壁は高いと言いたいのだろう。

麻生太郎氏の肖像
麻生太郎氏(画像=金融庁/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

麻生氏は、1月に岸田首相が事前の連絡なしに派閥を解散した際、4月の首相訪米までは首相を支えるが、総裁選対応では距離を置くとして、上川陽子外相を「新しいスター」と持ち上げたこともあった。その後、茂木氏や義弟の鈴木俊一財務相(麻生派)を含めて総裁候補として検討したが、岸田首相主導で3月に国際共同開発する防衛装備品輸出の容認で公明党の合意を取り付けたことから、その手腕を見直すことになる。

麻生氏は「岸田(首相)は仕事をしている、防衛費倍増や原発再稼働で。安倍晋三(元首相)以上だ。日本の政治は安定している」と周辺に語るなど、麻生派としても岸田再選支持に回帰してきている。

この場合、岸田派や首相周辺が現時点で想定する総裁選の構図は、岸田首相、高市早苗経済安全保障相、石破茂元幹事長、茂木氏の4人の戦いになるという。

総裁選に向けて派閥が「復活」するのか。次期衆院選、来年の参院選の顔を見据え、誰が選ばれるのか。予断は許されない。

「(新)総裁は非常に支持率が高くなる」

岸田首相が総裁選に出馬せず、9月の後継総裁選で勝利した新首相が10月にも衆院を解散するという考え(プランC)も、与党内にある。

この岸田退陣論の先陣を切ったのは、公明党の石井啓一幹事長だ。3月10日放送のBSテレ東の番組で、解散・総選挙の時期について「総裁選の期間中は、自民党が非常に注目を浴びる。そこで選ばれた総裁は非常に支持率が高くなる。その後の秋というのが、一番可能性が高いのではないか」との期待感を明らかにしたのだ。

公明党の山口那津男代表も3月27日、都内内で講演し、衆院解散・総選挙の時期について「信頼回復のトレンドが確認できるまでは解散すべきではない」と強調し、早期解散に否定的な考えを示した。

そのうえで、来年夏に参院選や東京都議選を控え、「大きな選挙が重なると、選挙に注ぐエネルギーが分散される。少し離した方がいい」と述べ、トリプル選挙やそれに近い選挙に反対する意向を示していた。