グズで仕方のないあなたの部下を、スーパービジネスマンに変える方法をお話ししたいと思います。

あなたの部下は、企画書を書くのが苦手です。期日通りに提出しろと叱っても間に合ったためしがなく、内容も最低。

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仕事の後の「ご褒美」は効果が薄い

「書き終えた後にご褒美をあげるようにしてみよう」

あなたはこう考えて、大げさに褒めて、食事をごちそうしてやりました。しかし、一向に彼のスキルは向上しないのです。

なぜ、こうなってしまうのか? 遠回りになりますが、ユダヤ人にはなぜノーベル賞受賞者が多いのか、という話を聞いてください。

ユダヤ人には、物心がついた頃から、聖書を読む習慣があります。書物を読むから頭がよくなり、ノーベル賞を取る人が増える……。

惜しいですが、ちょっと違います。重要なのは、聖書の読み方です。ユダヤ人の子供は、お爺さんの膝に乗せられて、飴を舐めさせてもらいながら聖書を読む習慣を持っているのです。お爺さんの膝は心地よく、飴は甘くておいしい。

つまり、ユダヤ人にとって活字を読むことは、強烈に「快」と結びついているのです。だから、ユダヤ人は猛烈に読書をする。なぜなら、読書をすることが気持ちよくて仕方がないからです。

メンタルコーチ 
平本あきお 

1965年、兵庫県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。北京五輪の金メダリスト、石井慧選手などのメンタルコーチ。多数の民間企業、官公庁の研修を行う。著書に『すぐやる!すぐやめる!技術』。

さて、先ほどのあなたのご褒美の与え方は、苦痛を乗り越えたときにご褒美をやる方法でした。これは、「道具的条件付け」と呼ばれる方法です。この方法だと、部下はご褒美は欲しがっても、企画書を書くこと自体は永遠に好きになりません。

一方、ユダヤ人の例は、「古典的条件付け」といいます。ここでは、祖父母や親が子供にやらせたいことを「快」と結び付けている。だから子供は、それをやりたくて仕方がない人間に育つのです。

もう、おわかりでしょう。グズの部下を改心させるには、叱責したり、ご褒美をあげたりするのではなく、彼にやらせたいことを、彼にとっての「快」と結び付けてやればいいのです。もしも彼が音楽大好き人間ならば、企画書を書いている時間に限って、職場で好きな音楽を聴くことを許してやればいいのです!

近年、脳の外側にある大脳新皮質(思考を司る)よりも、内側にある大脳辺縁系や扁桃核といった感情を司る脳のほうが、人間の行動に与える影響が大きいことがわかってきました。

大脳皮質がいくら「やれ」と命令しても、グズは直りません。しかし、感情を司る脳がやりたくてたまらなくなったら、「やめろ」と言っても企画書を書き続けるでしょう。そして、最も強く人を動かす感情こそ、「快」なのです。

(ライター 山田清機=文 川本聖哉=撮影)
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