調査を行えば「希少な新種」が多く見つかる場所
1976年3月に環境省(当時は環境庁)が地域内の地形、地質、動植物の現況などを調査して、初めての報告書を作成している。
南アルプスでは、聖岳以北の3000mピークにのみ見られた「チョウノスケソウ」が光岳で発見された。チョウノスケソウはアイスランドの国花であり、氷河時代の貴重な植物相が北半球最南端にある光岳地域で見られる。
ライチョウは、やはり氷河期から生息している唯一の遺存種で日本固有亜種。本州中部の標高2000m以上の高山帯に生息するが、やはり、光岳が世界の生息地最南端。生物地理学的に重要な位置を占める。ヨーロッパではライチョウは狩猟の対象で、ジビエとして食べられるが、日本のライチョウは神の使いとして、あがめられてきた。このため、人間が近づいても恐れないなど日本独特の特徴を有している。
光岳周辺には、リニアの環境保全会議で、議論の対象となる日本固有のヤマトイワナなど絶滅危惧種の動植物すべてが生息している。
リンチョウ沢源流に高地の冷水域を好むトワダカワゲラなどのほか、ナガレトビケラ、エグリトビケラの2新種、山頂付近ではゾウムシの新種、フトミミズ類の多くの新種など数多くが見つかっている。ただし、調査員、調査期間が限られていただけに、もし、新たな調査が行われれば、さらに数多くの新種が発見されることが期待される。
生物多様性専門部会では、第9回会議までヤマトイワナの保全を焦点に議論してきた。ヤマトイワナが絶滅に追い込まれた人為的な影響については、何ら問題にしなかった。
1970年代後半から地元の漁協が渓流釣り誘致のために大量の養殖したニッコウイワナを放流したため、繁殖力の強いニッコウイワナとの交雑が進み、純粋のヤマトイワナはすみかを追われた。
また、1995年、リニア計画路線近くの大井川源流部に稼働した中部電力の二軒小屋発電所の建設などの影響で、ヤマトイワナはやはりすみかを追われ、大幅に減少した。
さらに増え続けるニホンジカの影響がさまざまな動植物に与える影響も大きい。