アイキャッチ性の高いデザインも高評価
ファニーフェイスやキュッとしまったフォルムなどのアピアランスも独特の吸引力がある。
登場からそれほど時が経っていなかった最初の長距離ロードテストの時には行く先々で見知らぬ人から声をかけられた。生産終了が発表された後に行った最後のドライブではさすがに声をかけられたのは数人だったが、京都の平等院の近くで渋滞にハマっているときなど、通りすがりの人たちがクルマに目をやる。
販売台数があまりに少ないので最後まで物珍しかったということもあるが、それだけアイキャッチ性が高かったということでもある。
クルマとしては大失敗に終わった「Honda e」だが、ポテンシャルは間違いなく高いものがあったし、小容量バッテリーで高いパフォーマンスという狙いも良かった。
ルノーが2025年発売を目指している「R5」など、前輪駆動と後輪駆動の違いこそあれ、「Honda e」にインスパイアされたようなスタイリングだ。
小型BEVはどう作れば魅力的になるかというヒントを公に示しただけで自分は滅びるというのでは、敵に塩を送るようなものだ。「Honda e」を生かすことができなかったことをどう反省し、教訓を得るかはホンダの今後のBEV戦略の成否にも影響するので、しっかり総括すべきだろう。
買うなら中古車がオススメ
ところでこの「Honda e」、航続距離や急速充電受け入れ性は求めない、とにかく走りの楽しい小型BEVが欲しいというユーザーにとっては、今は購入のまたとないチャンスである。
狙いはまだ在庫がある新車ではなく中古車だ。日本における「Honda e」の累計販売1900台弱のうち、結構な台数をディーラーの試乗車が占めている。モデル廃止と合わせてそれらが走行距離が非常に少ない上物の中古車として出回りはじめている。
中心価格帯は300万円台前半。ホンダの新エネルギー車では過去にプラグインハイブリッドカーの「クラリティPHEV」がモデル廃止時に走行数千kmの新品同様の個体が新車の半値近い価格で出回ったことがある。
そのことから「Honda e」は300万円を切るのではないかと何となく予測していた。その読みは外れたが、上玉が300万円強なら狙っていた人にとってはありだろう。
所有する場合、自宅充電は必須。ホンダは独自の充電サービスを終了しているため急速充電にはある程度の出費を覚悟しなければならない。充電残数%という薄氷を踏むような思いをしないことを前提とすると、航続距離の目安は春夏秋の3シーズンが150km、冬季が120km。この範囲で楽しむというのであれば素晴らしいカーライフになるはずだ。