年下の上司は「全部オレより上」

出世は望むべくもないが、後ろ姿はどこか幸せそう。

では、仕事や出世への情熱を失いかけている「諦め系社員」にも話を聞いてみよう。大手電機メーカーの営業企画部門で働く山田博文(仮名、41歳)は、清水と同い年ながら、まるで仙人のように達観している。

「仕事は嫌じゃない。でも、やりすぎてつぶれたくはない。仕事以外の生活がやっぱり大事だからね」

スノーボードやカヤックなど、アウトドアスポーツが好きな山田。東北地方の支店で営業をしていたときは「外回りと称してスキーをしていた」と悪びれもせずに語る。最近は、料理上手で美大出身の妻の影響を受け、料理や芸術にも興味が出てきた。私生活を犠牲にしてまで出世するつもりはない。

実際、現在の部門で山田は係長クラスなのに対して、課長の男性社員はなんと36歳。5歳も年下の上司に嫉妬しないのだろうか。

「全然。優秀な人が上にいくのは賛成だね。彼は企画力も調整力も専門性も高いし、責任感もある。全部オレより上。でも、すごく忙しそう。給料もオレとほぼ変わらない。ああいう人を会社はもっと評価すべきだね」

完全に他人事である。山田がいるメーカーでは、35歳前後で同期のうち1割程度が群を抜いて出世するという。「オレは9割の群れの1人だよ」と淡々とした口調で語る山田。

年収は約750万円。与えられた仕事はちゃんとやっているつもりだが、もらいすぎかなと思っている。今の目標は50歳までに自宅のローンを返し終えて早期退職し、好きな街で喫茶店を開くことだ。