ベッドで横になる母と娘の様子を映した動画が大きな反響を呼んでいる。36歳の母親エリン・ストゥープは、4歳になる娘のオリビアを寝かしつけながら、「アイ・ラブ・ユーって言ってみて」と語りかける。オリビアがなかなか言葉を完成できず、ようやく「アイ・ラブ……ミー」と答え、「ママ……バイバイ」と語ると、エリンはこらえきれずに涙を流す。
このやりとりを捉えた動画が拡散する数カ月前まで、オリビアは言葉を発しており、少しずつだが文章も話せるようになっていた。しかし、言語能力が飛躍的に向上するこの年代の多くの子どもとは逆に、オリビアは小学1年生に上がるころには言葉を発することができなくなると言われている。彼女は、サンフィリッポ症候群と診断されているからだ。
小児アルツハイマーとも呼ばれるサンフィリッポ症候群(ムコ多糖症Ⅲ型)は、米生化学・分子生物学会(ASBMB)によると、精神状態の変化も症状のひとつとされている。
ウィスコンシン州に住む母エリンは本誌に対し、言葉の退行は、サンフィリッポ症候群に伴う多くの症状のひとつにすぎないと述べた。彼女は2023年11月、難病であるサンフィリッポ症候群についての関心を高めようと、その実状を映した動画をTikTok(@saving_liv)に投稿した。
「サンフィリッポ症候群について知ってもらいたい」
視聴回数が990万回に達したこの動画には、こんなキャプションが添えられている。「娘がこんなにもすぐに、言葉を発することができなくなるとは思わなかった。6歳になるころには、まったく話せなくなり、10代半ばまでしか生きられないと見られている。オリビアのためにも、手遅れになる前に治療法を見つけなくてはならない」
エリンは、本誌にこう語った。「サンフィリッポ症候群がどのような病気なのか、もっと知ってもらいたい。私たちはソーシャルメディアでは小児アルツハイマーと呼んでいるが、それは正式名ではない。サンフィリッポ症候群は、神経組織が変性して脳にダメージを与える病気で、運動能力や理解力を奪い、けいれんが起き、若い命を奪ってしまう。子どもの認知症と言えば、少しはわかりやすいだろう」