何もない状況から成果を出すにはどうすればいいか。歴史家・作家の加来耕三さんは「渋沢栄一は初めてのフランス・パリ訪問から帰国後、フランスで学んだ株式会社の仕組みを実践するために、藩と商人たちによる『商法会所』を設立し、新しい経済圏を生み出すことに成功した。ただ、すべて理解できていたわけではなく、あとはやりながら訂正し、調整していこうと考えた。ときにはわからないことはわからないまま、とりあえず『X』『Y』『Z』とおきながら物事を進めていくと、見える景色が変わり新しい状況が生まれる」という――。
※本稿は、加来耕三『リーダーは「戦略」よりも「戦術」を鍛えなさい』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
わからなくても、とりあえず進める
弱者逆転の戦術として、“日本近代資本主義の父”と呼ばれた渋沢栄一が、好んで活用した「捗遣り主義」をご紹介しましょう。
渋沢栄一は幕末近くに生まれ、江戸から明治に時代が変わる時期に、弱小だった日本の経済を大きく発展させた経済人です。
2024年(令和6年)の7月から、新1万円札の顔に選ばれた人物としても知られています。
彼の戦術がとくに有効なのは、新しいことを始めるときでした。
会社で新たなプロジェクトや新規営業など、新しいことを始めるときに、つい躊躇してしまう人は多いでしょう。
どんな予想外の事態が起こるかわからず、失敗することへの不安などで、なかなか具体的な行動に移せない、という声をよく耳にします。
そんなときに役立つのが、渋沢栄一が用いた「捗遣り主義」のやり方です。
一から日本の近代化を推し進めた渋沢の、戦術を紹介しましょう。