持たざる状態で一大勢力に勝つにはどうすればいいか。歴史家・作家の加来耕三さんは「戦国時代の名将・北条氏康は『河越城の戦い』にて8000の兵で8万の兵を打ち破った。十倍の敵では勝ち目はないから、『城は明け渡すから、なんとか城兵の生命を助けてやってほしい』と敵に書簡や使者を送り、頭を下げた。そして相手が『北条軍に戦意なし』と油断し切ったところで、夜襲を決行し、鮮やかな大逆転勝利をおさめた。相手の心理状態をコントロールすることができれば、人もお金もさほど必要なく、勝利することができる」という――。

※本稿は、加来耕三『リーダーは「戦略」よりも「戦術」を鍛えなさい』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

チェス盤
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カネもない、人もいない中で作戦を遂行し、勝利する

予算は少ない、人員も十分ではない。他の部署からのサポートも期待できない……。

ないものづくしの中で、リーダーは知恵をしぼって戦術を考え出し、目標を達成しなければなりません。

戦国武将も、現代のビジネスパーソンと同じでした。つねに十分な兵力、資金、物資が用意されているわけではありません。

敵が襲ってきたら、四の五の言わずに戦わなければなりません。敵はこちらの準備万端を、待ってはくれません。

古今を問わずリーダーの仕事は、“現有戦力”で戦い、勝つことです。

歴史上のリーダーはどのようにして、不利な状況から逆転勝利をつかんできたのか、その成功例をいくつかみてみましょう。

逆転戦術その一
質より量で勝負する

「こんなメンバーでは勝てない」

ついリーダーが口にしてしまう、愚痴です。

もっと優秀な人材が揃っていれば、もっと大きな成果が出せるのに……。

本当にそうかもしれませんが、叶わない以上、今いるメンバーで勝つ方法を考えるのがリーダーの仕事です。

織田信長はそんな状況から、見事、逆転勝利をあげてみせました。