テーマパーク「レゴランド・ジャパン」の本多良行社長の顧客対応がネットで批判を集めている。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「本多社長はアメリカでMBA(経営学修士)を取得し、外資系コンサルティング会社で活躍してきた正真正銘のエリートだ。一方、今回の対応からは、きらびやかな経歴の持ち主が陥りがちな『専門バカ』『タコツボ化』の弊害が見て取れる」という――。
レゴランド・ジャパン
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レゴランド社長が引き起こした「炎上騒動」

人気玩具「レゴ」のテーマパーク、「レゴランド・ジャパン」(名古屋市)の顧客対応が物議を醸している。今回の対応は、褒められたものではない。

来場者は「子ども用のチケット」で入場したとスタッフから疑われ、差額の支払いを求められた。さらに、40分以上も寒空の下で待たされた挙げ句、スタッフ側の間違いだったとわかったのに説明や謝罪はなかったという。

来場者はこうした経緯をX(旧Twitter)に投稿。それに対して「レゴランド・ジャパン」の本多良行社長が直接対応したのだが、本多社長が来場者と交わしたDM(ダイレクトメッセージ)のやりとりを無断で公開し、炎上した。

というものである。

もとになったトラブルだけではなく、わざわざ社長が介入したばかりか、個人同士のやりとりを勝手に公開する。しかも、炎上したとなるや、釈明せずに、すべての痕跡を消してしまう。

顧客対応として教訓を引き出せるだろうし、そうした議論は、すでになされている

いまさら、レゴランドのサービスが悪いとか、顧客ファーストではない、といった、個別の批判をしたいわけではない。

それよりも、今回のポイントは、彼が見せた「万能感」にある。自分だけが正しいかのような振る舞いの背景に、その経歴があるのではないか。

「MBA→外コン→30代社長」のエリート

現在42歳の本多良行社長は、2005年にアメリカのインディアナ大学を卒業後、2012年にミシガン大学でMBA(Master of Business Administration=経営学修士号)を取得している。

レゴランド・ジャパンの本多良行社長(2021年12月就任)
写真=時事通信フォト
レゴランド・ジャパンの本多良行社長(2021年12月就任)

その3カ月後から、コンサルティング会社「ローランド・ベルガー」に入社し、約2年後の2014年に同業のストラテジーアンド(東京オフィス)に移り、2017年から4年間、ホテルコンサルティング会社「HRSジャパン」の社長を務めてきた

アメリカのMBAホルダーで、外コン(外資系コンサルタント会社)出身で、30代で社長に就く。

肩書は非の打ちどころがない。エリサー(エリートサラリーマン)の頂点ではないか。なんでもできるし、自分は間違っていない、と思うのも無理はない。

「レゴランド・ジャパン」社長就任の発表では、つぎのように宣言している。

“いましか、家族でできない”特別な体験を通じて家族の時間と大切な思い出を提供してまいります。そして、多くのご家族の心に残る、楽しかった思い出の場所がレゴランド・ジャパンであるよう、引き続きゲストとスタッフの健康と安全を第一に運営してまいります。

今回の炎上騒動の発端となった人たちにとっては、たしかに「心に残る」出来事には違いないものの、そうした皮肉を言いたいわけではない。

それよりも、本多社長が、経歴の上では、レゴどころか、エンターテインメントの職業経験が、まったく見えないところが注目に値しよう。

本多社長は、いわゆる「プロ経営者」なのである。

ここでは、その意味を考えてみたい。