「プロ経営者」と「アマ経営者」

ローソンからサントリーの社長になった新浪剛史氏をはじめ、少し前には、カルビーを再建しライザップに呼ばれた松本晃氏、さらには、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏も含まれるかもしれない。

日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏
日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏(写真=Thesupermat/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

いずれも、過去に業績を上げた実績があり、企業の外から招かれた点で「プロ経営者」と呼ばれているのであろう。

企業の経営戦略を専門とする牛島辰男氏は、「伝統的に、日本企業の経営者では組織内部での昇進を積み重ねてきた生え抜き型が圧倒的多数を占める」事情があるため、「従来型の経営者と区別するために何らかの用語を当てることに、私はいささかなりとも異論はない」と述べる

その上で、「英語のprofessionalの対語はunprofessional」だとし、「アマ経営者(unprofessional manager)」は、「かなり失礼な表現だと感じるのは、私だけではないだろう」と疑問を呈する。

しかし、professional managerもunprofessional managerも、どちらも英語としては成り立たないのではないか。

実際、英語では「プロ経営者」に当たる言葉は、管見の限り、見つからない。

その組織の運営に責任を負う立場=経営者は、「プロ」でしかありえない。「アマチュア」でも「素人」でも困るし、そんな人物は経営者に選ばれないし、選ばれるべきではない。

それなのに、「プロ」経営者との言葉が流行してきた。

なぜ、わざわざ「プロ」と付けるのか。

「プロ経営者」は本当に「プロ」なのか

自信がないからである。

自分たちが奮闘してきた成果や努力、姿勢に確信が持てないからである。

日本のどこがダメか。何が時代遅れなのか。

「失われた10年」と言われた頃から、つまりは、平成の初期から、30年近くにわたってずっと、日本企業の欠点ばかり指摘してきた。

とりわけ「組織内部での昇進を積み重ねてきた生え抜き型が圧倒的多数を占める」人事システムは、上司の顔色を伺い、忖度そんたくにがんじがらめになる「アマ経営者」しか産まない、と非難の的になってきた。

日本のGDPがドイツに抜かれて世界第4位になりそうだとのニュースも、自信のなさに拍車をかける。

「プロ経営者」という言葉は、こうした不安の裏返しにほかならない。

自分たちのやり方が心もとないなら、いっそ外(というかアメリカ)で仕込まれた「専門家」に任せてしまおう。「プロ」である以上、責任もとってもらえばよい。そんな他力本願な姿勢から生まれたのではないか。

では、その「プロ経営者」は、本当に「プロ」なのか。そうとは言い切れない。

たしかに経営や経営学の「プロ」ではあるだろう。それは、ともすれば学問の知識や、経営者としての経験だけに依存しがちであり、いわば「専門バカ」になりかねないのである。