成り上がるにはどうすればいいか。歴史家・作家の加来耕三さんは「帝国ホテルやホテルオークラ、帝国劇場などを創設した大倉財閥の創設者・大倉喜八郎は、幕末に裸一貫から捨て身の戦術で成り上がった。喜八郎は大儲けできるのにいずれも鉄砲商が店を閉めていた状況をチャンスと捉え、危険なエリアを夜中に往復して鉄砲を運んだ。生命懸けの戦術をそのままマネすることは難しいが、リスクをとらなければ成功できない場面に向き合い、ある意味で開き直って勝負してみることは大事である」という――。

※本稿は、加来耕三『リーダーは「戦略」よりも「戦術」を鍛えなさい』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

狩猟用ライフル
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捨て身の覚悟で活路を開く

俺の武器は、ガッツと信用だ――。

これは、1948年(昭和59年)に日本で公開されたアメリカ映画『スカーフェイス』(監督・ブライアン・デ・パルマ)での主人公の台詞です。

アル・パチーノ演じるアントニオ・モンタナ(通称トニー)は、キューバからアメリカに追放された犯罪者です。

すべてを失ったトニーは、裸一貫で成り上がるために、何でもやってやるという覚悟です。麻薬密売組織の依頼を受け、危険な取引現場にも足を運んで身体を張りました。

そんなトニーが麻薬王に啖呵を切ったのが、先の台詞でした。

令和の日本では、裏社会でのし上がっていく主人公の生き方は勧められたものではありませんが、何も持っていない人間にとって、「ガッツと信用」が大きな武器になるのは今も昔も変わりません。

それは、激動の時代を迎え、裸一貫で成り上がろうとする人たちが溢れていた幕末の日本においても、同様でした。