ロシアで反プーチン派の旗印となっていたアレクセイ・ナワリヌイ氏が、2月16日、北極圏の刑務所で獄死。ナワリヌイ氏の妻ユリアさんは夫亡き後も気丈に政治的発言を続けている。ユリアさんについての報道を調べた今井佐緒里さんは「ユリアさんの経歴は、日本だけではなく、欧米のメディアでもあまり知られていない。それは彼女が『内助の功』的な役割に徹していたからだ」という――。
ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(左)と妻ユリア氏(中央)(=2018年03月27日、ロシア・モスクワ)
写真=AFP/時事通信フォト
ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(左)と妻ユリア氏(中央)(=2018年03月27日、ロシア・モスクワ)

夫がプーチンの監視下で獄中死したとき、妻が発したメッセージ

「こんにちは。ユリア・ナワルナヤです。今日初めてこの(夫の)チャンネルであなた方にお話します。私はこの場所にいるべきではなかった。このビデオを録画すべきではなかった。私の代わりに別の人がいるはずだった。しかし、その人はウラジーミル・プーチンによって殺されました」

獄中死した、ロシアの反体制野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ(1976年6月4日~2024年2月16日)。妻のユリア・ナワルナヤ(47歳)は、この言葉でYouTubeに語りかけ始めた。とても毅然とした態度で。夫の遺志を継ぐ決意を表明する動画メッセージである。

「アレクセイを殺すことで、プーチンは私の半分、私の心の半分、魂の半分を殺しました。しかし、私にはまだ残りの半分があります。それは私にあきらめる権利がないことを告げています」
「私はアレクセイ・ナワリヌイの仕事を続けます。私は、私たちの国のために闘い続けます。私たちを捉えて離すことのない悲しみと、終わりのない痛みを共有するだけではなく、私の怒りを共有してください。私たちの未来を殺そうとする者たちに対する怒り、憤怒、憎しみを共にしてください」

ロシア国内に戻れば命が危険で、夫の葬儀には参列できず

この動画でユリアは、暗い紺色の上衣を身に着け、薄化粧だった。背景は暗く、幾つかろうそく型の電気が灯されていた。しかしマニキュアは、彼女の決意を表すかのように真っ赤だった。

「私たちはあらゆる機会を利用して、戦争、汚職、不正と闘わなければなりません。公正な選挙と言論の自由のために闘い、私達の国を取り戻す闘いです」
「ロシア、夫が心から夢見ていた自由で、平和で、幸せで、美しい未来のロシア。それが私たちが必要とするロシアです。そんなロシアに住みたいのです。アレクセイと私の子供には、そんなロシアに住んでほしいです。私はアレクセイが心に思い描いていた、そんなロシアをあなた方と一緒に築きたいのです」

夫アレクセイの葬儀が3月2日にモスクワで行われたが、ユリアの姿はどこにもなかった。現在国外にいて、もし戻ったら二度と出られず命の危険があると言われている。

しかし、そんな彼女の経歴は、日本だけではなく、欧米のメディアでもあまり知られていない。彼女は「内助の功」的な役割に徹していたからだ。夫と一緒にデモに参加しても、政治的な主張をすることはたいへん稀だった。いったい、どのような女性なのだろうか。