日経平均株価が史上最高値を更新し、不動産は高騰、企業決算は軒並み過去最高益を更新。これは、「新・バブル時代」と言えるのか。経済評論家の加谷珪一さんは「実態経済をともなわないマネー主導のインフレが起きている。株価も不動産も価格調整しているだけ」と指摘する――。学びのサイト「プレジデントオンラインアカデミー」の好評連載より、第1話をお届けします。
※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『《新・バブル経済》の読み解き方』の第1話を再編集したものです。
今の経済実態はなるべくしてなった当然のインフレ
株式や不動産の価格は上昇し、大企業の決算発表では過去最高益を出す企業が続出しました。しかし、物価の上昇ほどに賃金は上がらず、社会全体として景気が良いという実感が持てない。そうした現状について、ポジティブに捉えるべきか、疑ってかかるべきか、混乱が生じているかと思います。
しかし、現状は十分に予想されたことで、今起きているのは、インフレです。アベノミクスが始まってから10年、日銀は市場にお金をばらまいてインフレにしようとしてきた。ECB(欧州中央銀行)やFRB(連邦準備制度理事会)よりさらに踏み込んだ金融緩和を実施しましたが、日本経済があまりに弱いために物価はなかなか上がらなかった。けれども、まさに異次元の緩和を10年続けたのですからインフレにならないわけがないのです。
経済の実態が良いわけではないのに日経平均が3万3000円を超えたり、不動産の高級物件の値段がさらに上がったりしている。一方で、企業では最高益が出ているのに、給料が上がらない。これはおかしいじゃないかという疑問がわくのも当然ですが、これらはすべて、「インフレだから」というひと言で説明がつきます。
実は日本の消費者物価はこの10年、わずかずつですが上がり続けてきました。こうしたインフレが続いているのに株価や不動産価格が横ばいだとしたら、それは、大幅に下落しているということです。しかし、多くの投資家はこれに気がつかず、報道の通り株価が上がっていると思ってしまう。実際に起こっていることは、単なるインフレなのです。