最も注目すべき指標は、物価指数

現状を把握するのに、最も注目すべき指数は、消費者物価指数です。毎年少しずつ物価が上がり続けてきた日本の消費者物価指数の上昇率は現在4%になりました。過去10年ではすでに12%も物価が上がっており、これは相当な上げ幅です。しかし、その間、日経平均株価は大きく動いていなかったわけですから、今の株価はその部分を調整しているにすぎません。実際は、株価が上がっているのではなく、インフレ分を調整しているだけです。不動産も同様で、インフレになった分だけ、価格が上昇しているのです。

企業業績にも同じことが言えます。インフレで100円のものが120円になれば売り上げだけを見ても単純に1.2倍になります。メディアは今年3月期の決算発表を受けて過去最高益だと喧伝けんでんしましたが、円安でもあるので決算上の数字が大きくなるのは当たり前のことです。経営の実態が良くなっているとは限らない。その証拠に、利益率を見ると昨年より下がって儲からなくなっている企業が目立ちます。だから、賃上げができないという話になってくるのです。

円安も株価上昇の要因になっています。2021年夏には1ドル110円だった円は翌2022年には150円目前まで下落しました。日本円の価値が2割も3割も下落したわけですが、例えばトヨタ自動車やソニーなどの企業価値もその分減少したかというと、そんなことはない。であれば、円の価値が仮に2割下がったときには、その企業の時価総額は逆に日本円で2割増えていなければおかしい。だから、個別企業の株価も上がる。そういう図式が成り立ちます。

コストプッシュ型ではなく、マネー主導型のインフレ

現在起こっているインフレの根本的な原因は何でしょうか。今回のインフレをコストプッシュインフレと言い切る専門家がたくさんいますが、政権に忖度そんたくしたいのかと疑いたくなるほど、そのように捉える意図がわかりません。今回のインフレは、資源や原材料が値上がりして起こるコストプッシュインインフレの要素も存在していますが、それだけが原因ではないと思います。もちろん、需要が供給を上回ることで価格上昇を招くディマンドでもプルでもありません。

今起きているインフレの原因は、明らかに全世界的な大規模緩和策ですさまじい量のマネーがばらまかれたことによるものです。意図的にインフレにする政策を世界的に実行していたわけだから、大量の貨幣がインフレを誘発し、それが物価を押し上げ、それでも余るマネーが行き場を求めて、結果的に実物資産に流れ込む。だから、銘柄としては、不動産や天然資源への投資額が増えているというのが現状です。