一方で消費者は物価高に苦しめられています。直近の物価指数は生鮮食品とエネルギーを除外しても前年比で4.3%上がっているのに対し、令和5年4月の労働者の平均賃金は前年比で1%の上昇にとどまっています。つまり実質的な賃金は3%以上減少している。不動産や資源ばかりが価格上昇しても、庶民は全然いい思いをしない。それが今の日本の実態です。

物価と賃金の関係

日銀が金融緩和方針を転換しない限りインフレは続く

では、この実態経済をともなわないマネー主導のインフレはいつまで続くのでしょう。結論を言うと、金融緩和を改め、日銀がばらまいたマネーを回収し、バランスシートが正常化するまでインフレは続くでしょう。少なくとも、日銀が政策転換を表明しない限り、大きな流れは変わらないと思います。

だから、どこかで金融の引き締めに転じなければいけない。日銀の植田和男新総裁もそれはわかっています。けれども、今、日本が金利を2%上げたら国債の利払い費は最終的には10兆円、20兆円という額になりますから、なかなか踏み切れない。

一般家庭においても、多くの人が住宅ローンを変動金利で借りていますが、金利が上昇するとローンの返済額が増えて、住宅ローン破産者が続出する。さらに言うと、日本政府はこの10年、20年という期間、企業の倒産を防ぐために、金融機関に対し、企業への過剰な貸し出しを求めてきました。見かけ上は景気がいいのだと言い続けた結果、借金まみれの企業を存続させたため、金利が上がるとそうした企業の中から、倒産するところが出てきます。だから、政府日銀は当分の間、金利を上げられない。

日本だけ金融緩和が続けば、まだまだ円安になると読む海外のヘッジファンドがさらに円を売る。1ドル150円、160円になり、さらなる円安によって輸入物価が上がっていく。そんな形でインフレが継続するシナリオがもっとも可能性が高いと思われます。

(構成=大竹聡 図版作成=佐藤香奈)
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