カジュアルと作業服を両立させるのは難しい

ワークマンのカジュアル需要が増えれば増えるほど、作業服店とカジュアル店で同一の商品を売るという戦略は難しくなるでしょう。なぜならカジュアル客と作業服客では購買意欲も購買のサイクルも全く異なるからです。

かつてはワークマンのコンセプトに賛同する少数の客だけで商売が成り立ちましたが、規模が大きくなるにつれてコンセプトを理解しない客も増えます。そうなると結果的に従来客からも新規カジュアル客からも不満を持たれてしまうでしょうから、カジュアル専用品番を増やさざるを得なくなります。ワークマンが当初の目的通りにカジュアルと作業服を両立できるかどうかはこれからが正念場ということになるでしょう。

作業服メーカーのカジュアル化は過去にもあった

作業服とカジュアルの両立というワークマンの取り組みは世間一般では極めて斬新だと評価されていると感じるのですが、実は国内作業服業界にとってはこれまで幾度となく挑戦してきた事柄のリメイクに過ぎないのです。

そもそも作業服というのはカジュアルと高い親和性があります。カジュアルの王道アイテムであるジーンズが元々はアメリカの炭鉱夫向けの作業服として開発されたということは広く知られていることでしょう。

ジーンズに限らずオーバーオール(サロペット)やカバーオールジャケット、ペインターパンツ、ベイカーパンツなんていうカジュアルアイテムも元は作業服です。また、ジーンズの先駆者である「リーバイス」、現在はセレクトショップなどでも取り扱いのある「ディッキーズ」と言ったブランドも元は作業服ブランドですし、近年人気が出てきた「ダントン」「ユニバーサルオーバーオール」といったブランドも作業服ブランドとして生まれています。

しかし、戦後、とくに70年代以降の作業服はカジュアル化しませんでした。おそらくは耐久性があってなおかつ安価な素材の開発が進み、デニムなどの綿厚地織物を主体とした昔の作業服とは風合いが随分と異なってしまったことが原因なのではないかと個人的には考えています。