インターネットで物が買える時代に、リアル店舗は不要なのか。流通アナリストの中井彰人さんは「イオンのGMS事業は利益貢献をしていない。だが、イオンモールなどの不動産事業の集客エンジンになっている。今後は消費者データの源泉としても大きな役割を果たすだろう」という――。
地方の大衆消費の受け皿となっているイオン
活況を呈する富裕層消費とインバウンド需要の回復によって、基幹店の売上が過去最高となる店もあるなど、業績好調な大手百貨店とは異なり、地方では百貨店閉店のニュースが続いている。最近では島根県、岐阜県で県内最後の百貨店が閉店(閉店を決定)となり、今年、全国で百貨店のない県は、山形県、徳島県、島根県、岐阜県の4県となる。
富裕層やインバウンドの盛り上がりを享受しがたい地方においては、大衆消費から離れつつある百貨店の存在感は希薄化しつつあるのだが、こうした地方の大衆消費の受け皿として存在感を示しているのは、イオン・グループをおいて他にないだろう。総合スーパーとして全国展開しつつ、スーパー、ドラッグストア、様々な専門店を自社グループ内に擁し、様々な規模のショッピングモールを全国展開している小売業は、今やイオン以外ないのである。
小売業売上トップはセブン&アイだが…
小売業売上トップ企業と言えば、セブン&アイ・ホールディングスということになるのだが、その事業の構成をみれば、この会社がグローバルコンビニ企業であることは明らかであろう。売上の8割超、営業利益の9割超を国内、海外合わせたコンビニ事業が稼ぎ出す構造であり、祖業であるスーパーストア事業は売上の12%ちょっと、利益貢献はほとんどない。一部株主から不採算事業として指摘を受けていた百貨店事業は手放し、スーパーストア事業は、アパレルから撤退して首都圏中心に食品特化で再構築を図っているという途上であり、とても総合小売業とは言い難い(図表1)。