地域一番の巨大な商業施設を投入しトップシェアを確保

イオンの大型商業施設は、ざっくり言えば、時代遅れとなったGMSの周囲に、成長しつつあった専門店群を配置することで、ワンストップショッピング機能を補うためにできたものだ。ただ、イオンのやることは徹底していた。不動産コストの安い地方において、多様な専門店を集めた地域一番の巨大な商業施設を次々に新設で投入し、地方エリアでトップシェアを確保することに成功した。

ライバルである大手商業ディベロッパーは、基本的に大都市圏郊外を中心に展開しており、地方エリアにはあまり出ない。三井不動産グループのららぽーとは、大型ショッピングモールとしてはよく知られているが、ららぽーとは3大都市圏+福岡エリアにしかない。地方中堅スーパーを相手に、規模で圧倒するという手法で、ほぼ連戦連勝することに成功したイオンは、地方における大型商業施設としては、圧倒的な存在となった(一部地域では例外もあり、中四国九州においては、地方スーパー、イズミのゆめタウンがライバルとしてガチンコ戦を続けている)。

株式市場の評価は「意外なほど低い」

大型施設運営を軸に地方エリアで複合的に展開するイオンは、地方における小売業界地図をほぼイオンVS地域有力小売という構図に塗り替えた。イオンのシェアが高まると、そこを起点とした業界再編(イオン傘下に入るか、地場有力企業と組むか)が起こるという構造である。しかし、ここまでの影響力を持っているイオンなのだが、株式市場の評価は高いとはいえず、時価総額では業界1位ファストリの4分の1、2位セブン&アイの6割ほどであり、事業規模でははるかに小さいニトリ、PPIH(ドンキ)の1.4倍強ほどでしかない。投資収益率が低いためなのであるが、業界での存在感に比べると、意外なほど評価が低いという印象ではある(図表3)。

【図表】小売業 時価総額ランキング
図表=筆者作成

こうした評価の要因としては、人口減少高齢化が著しい地方において、大型商業施設を多数運営していることが、懸念されている面もある。また、将来的にECの拡大が進むことで、大型施設の持続可能性が失われるという懸念もあるのだろう。実際、コロナ禍の前から米国において、ショッピングモールの閉店や企業破綻が相次いでいるという事情もあり、イオンに対する懸念の背景のように思われる。

ただ、個人的にはイオンの地方大型商業施設の持続可能性は低くはない、と思っている。単純に言えば、ライバルのいない地方マーケットでは、地域一番店は市場縮小の中でも最後まで残ることが可能だから、である。それどころか、国内唯一の全国展開型の総合小売業となったイオンは、将来的に圧倒的競争力を持つ可能性さえある、とも考えている。それは、ビッグデータ時代における圧倒的な顧客接点なのだが、少し説明したい。