このように社風というものは、いかようにも作用するものであり、どう作用するのかは状況によって変わる。戦後の日本社会は社風という曖昧な力を武器に、工業製品の大量生産に邁進したが、社会は確実に変化している。

特定の社風を維持するには、同質社会であることが絶対要件となり、同じような人材ばかりが採用され、組織は硬直化していく。特に1990年代以降は市場の多様化とデジタル化が一気に進み、従来のやり方はことごとく通じなくなった。

雰囲気ではなくルールで統治することが絶対条件

多種多様な人材を組織化しなければならない現代社会においては、雰囲気ではなくルールで統治することが絶対要件であり、その責任を担うのが経営陣であることは明白だ。

全ては経営の問題であり、一連の不正行為は、長年にわたってガバナンスが機能していなかった現実を露呈したにすぎない。報告書では最終責任は経営陣にあると指摘しているものの「経営幹部のリスク感度を高めるための取り組み」など甘い言葉が並ぶ。

上場企業の経営者というのは、場合によっては刑事告発や巨額の賠償責任を負う立場であり、そうであればこそ高い社会的地位が与えられる。

リスク感度が低い人材が経営者になることなど、そもそもあってはならない。本当に幹部のリスク感度が低かったのであれば、経営陣を全交代させるくらいの改革を行わなければ、信頼回復など不可能だろう。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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