いつも元気でいるためにはどうすればいいか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「ある実験では、過去の出来事をあれこれ思い出していくと、最終的に『嫌な思い出』を思い出す傾向が比較的強かった。実際の人生の出来事を詳細に振り返れば、いいことも悪いこともどちらも同じように起こっているのだろうが、どうしても嫌なことばかり長く記憶に定着してしまう。だから心を明るく保つには、ビートルズの名曲『Let it be』で智慧の言葉と称賛されているように、『何も考えずに放っておく』ことが大切である」という――。
※本稿は、高田明和『88歳医師の読むだけで気持ちがスッと軽くなる本 “年”を忘れるほど幸せな生き方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
毎日、まっさらな新しい今日を生きる
いいえ昨日はありません
今日を打つのは今日の時計
昨日の時計はありません
今日を打つのは今日の時計
今日を打つのは今日の時計
昨日の時計はありません
今日を打つのは今日の時計
三好達治(1900〜1964 詩人)
上記は、三好達治の「昨日はどこにもありません」という詩の一節です。
たとえば今、時計が午後6時の時を告げるとき、それは必ず「今日」という日の午後6時です。昨日の午後6時を知らせることはありません。
昨日の時間を告げる時計なんてものはない。
つまり、昨日や一昨日という過去の時間は、机の引き出しの中にも、ゴミ箱の中にも、どこにもないのです。私たちの記憶の中にあるだけで、現在の時間軸のどこにも存在していません。だから、思い出しさえしなければ、そんな過去は消えてなくなります。
もし、思い出すたびに心が曇るような過去があるなら、思い出す必要はないのです。過去を思い出さなければ、毎日、まっさらな新しい今日を生きる人になれます。そして、詩は、次のように続きます。
今日悲しいのは今日のこと
昨日のことではありません
昨日はどこにもありません
今日悲しいのは今日のこと
昨日はどこにもありません
何が悲しいものですか
昨日のことではありません
昨日はどこにもありません
今日悲しいのは今日のこと
いいえ悲しくありません
何で悲しいものでせう昨日はどこにもありません
何が悲しいものですか
この詩と同じように、「過去なんてものは存在しない」と説く教えは、数多くあります。主だった東洋のものを紹介しておきましょう。
よいことも悪いこともすべて思い出さず
君子は事来たりて心始めて現る 事去りて心随って空し
忘却は心を洗う石鹼なり
過去は引き出さなければ存在しない
世の中は ここよりほかはなかりけり よそにゆかれず わきにゃおられず
世の中は 今よりほかはなかりけり 昨日は過ぎつ 明日は来たらず (元は今様)
山田無文老師(1900~1988 臨済宗の僧侶)
君子は事来たりて心始めて現る 事去りて心随って空し
(16~17世紀 明代の著作家)
忘却は心を洗う石鹼なり
谷口雅春(1893~1985 宗教団体「生長の家」創始者)
過去は引き出さなければ存在しない
中川宋淵老師(1907~1984、臨済宗の僧侶)
世の中は ここよりほかはなかりけり よそにゆかれず わきにゃおられず
世の中は 今よりほかはなかりけり 昨日は過ぎつ 明日は来たらず (元は今様)
山本玄峰老師(1866~1961 臨済宗の僧侶)