文部科学省のGIGAスクール構想により、いまや小中学生もタブレット端末などを所有する時代。スマートフォンが子どもの脳に与える影響を研究している東北大学加齢医学研究所助教の榊浩平さんは「実験したところ、言葉を調べたとき、スマホで検索した単語は1つも記憶に残らず、紙の辞書で調べた単語は5つのうち2つが記憶できた。便利だからと言って、記憶をアウトソーシングしてはいけない」という――。

※本稿は、榊浩平(著)、川島隆太(監修)『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

GIGAスクール構想で子ども1人が1端末を持つように

パソコンやタブレット端末などのデジタル機器を用いた教育は、子どもたちの脳や学力へどのような影響を与えるのでしょうか?

2019年12月、文部科学省はGIGAスクール構想を発表しました。「1人1台端末」と、「高速大容量の通信ネットワーク」を整備することで、「多様な子どもたちを誰ひとり取り残すことなく、公正に個別最適化された資質・能力が育成できる教育環境」を実現することを目指しているようです。

文科省の2021年7月時点における「端末利活用状況等の実態調査」によると、公立の小学校等の96.2%、中学校等の96.5%が、「全学年」または「一部の学年」で端末の利活用を開始しているとのことです。このように、すべての子どもたちへ「1人1台端末」がすでに行き届きつつあるのが現状です。

2分間で調べられる言葉の数は辞書よりスマホが1つ多い

みなさんは知らない言葉を調べるときには何を利用していますか?

最近はスマホを使って、指先一つで簡単に情報を得られるようになりました。一方で、スマホで得た知識は頭に残らず、すぐに忘れてしまうような感覚を抱いている方も多いのではないでしょうか。

そこで、私たちは実際に調べものをしているときの脳活動を計測し、スマホを使用した場合と紙の辞書を引いた場合で比較する実験を行ないました。東北大学の学生さんにご協力いただき、少し難しい単語(例えば「忖度」など)の意味を2分間でどれだけ調べられるかを、超小型NIRSニルス(脳活動を測る機器の一つ)を用いて前頭前野の脳活動を計測しながら実験しました。

撮影=プレジデントオンライン編集部

実験の結果、紙の辞書を引いた場合は2分間で5つの単語の意味を調べることができました。一方で、スマホを使用した場合は6つでした。この結果から、やはりスマホは手軽に情報を得られる便利な道具だといえます。