スマホは子どもの勉強や学力にどのような影響を及ぼすのか。東北大学加齢医学研究所助教の榊浩平さんは「スマホを持つ中学3年生の80.7%が『ながら勉強』をしています。そしてスマホをいじりながら3時間以上勉強をしても、実質30分勉強した程度の学習効果しか得られないことがわかりました」という――。

※本稿は、榊浩平(著)、川島隆太(監修)『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

スマホを使う時間と成績には因果関係があるのか

前の記事で、私は「スマホ等を長時間使用する子どもたちは学力が低い」という表現をしました。では、「スマホ等を長時間使用すると学力が下がる」と言うことはできるでしょうか。

これまで取り上げてきた単年度のデータを対象とした解析からは、スマホ等の使用と学力の低下のどちらが原因でどちらが結果なのか、その因果関係までは答えることができませんでした。

私たちは、スマホ等の長時間使用と学力の低下、どちらが原因でどちらが結果なのかをはっきりさせるため、複数の年度にわたってデータを集める追跡調査を行ないました。

【図表1】の左側の棒グラフは、2015年度における小学校6年生および、中学校1年生のスマホ等の使用時間と学力の関係を表しています。このグラフではスマホ等使用「1時間以上」の子どもたちをひとまとめにしています。2015年度においてスマホ等を「使用していなかった」子どもたち、「1時間未満」の使用にとどめられていた子どもたち、「1時間以上」使用してしまっていた子どもたちの3つのグループに対して、それぞれ2年後のスマホ等の使用時間の変化と学力の変化を調べました。

スマホの使用時間が1時間以上になると成績が下がる

まずは、2015年度の時点でスマホ等を「使用していなかった」子どもたち(黒色の棒)の変化を見てみましょう。右側上段の線グラフをご覧ください。2年後の2017年度の時点で、そのままスマホ等を「使用していなかった」子どもたち(黒色の実線)、スマホ等を使うようにはなったものの「1時間未満」にとどめることができていた子どもたち(濃い灰色の破線)の成績は伸びていました。一方で、スマホ等の使用時間が「1時間以上」になった子どもたち(薄い灰色の実線)の成績は下がっていました。

続いて、中段の線グラフをご覧ください。2015年度の時点でスマホ等を「1時間未満」の使用でとどめられていた子どもたち(濃い灰色の棒)の変化を表しています。2年後の時点でスマホ等を「使用しなくなった」(黒色の実線)と、そのまま「1時間未満」(濃い灰色の破線)の子どもたちの成績は上昇していました。一方で、「1時間以上」に使用時間が延びてしまった子どもたち(薄い灰色の実線)の成績は低下していました。