受験者数が過去最高を更新した2023年度の首都圏中学入試で、とりわけ熾烈を極めたのは帰国生中学入試だ。英語を必須受験科目とし、文法や読解問題、リスニングのほかに記述のエッセイ(小論文)で高得点を出さないと合格は遠のく。今回も英検1級ホルダーの小6でさえもバタバタ落ちる現象が見られた。その実態を子育て・教育ライターの恩田和さんがリポートする――。

帰国生入試の最難関「渋ズ」「渋谷系」をご存じか

2023年度の首都圏中学入試は受験者数が過去最高を更新する6万6500人(日能研調べ)で、例年以上の激戦だった。昨今は国語、算数、理科、社会の4科目受験の他に国算1~2科目受験や、思考力や表現力を競う特色入試など、個性的な受験方式が増えている。

そうした中で「帰国生中学入試」の人気が過熱している。

帰国生入試といえば、文字通り、「帰国生」すなわち、保護者の海外赴任に伴って海外生活を経験し、日本に帰国してきた子女のための入試制度というのが従来の常識だった。実際に、帰国生枠を設けているほとんどの学校が、募集要項に「保護者の海外転勤または海外在留により継続して海外在留1年以上かつ帰国から3年以内」などの出願資格を明記していた。

ところが、2023年度のトップ校合格者で目立ったのは、国内のインターナショナルスクールなどに在籍している日本の小6相当の受験生だ。それも、両親共日本人で、一度も海外生活を経験したことのない、いわゆる「純ジャパ」と呼ばれる子どもたちが多い。

一般の中学受験において成績最上位層の子が受けるのは、開成・麻布、桜蔭・女子学院といった「御三家」を筆頭とする名門だが、帰国生や国内インターの最上位層が合格を夢見ているのはどんな学校なのか。

それは「渋ズ」「渋谷系」だ。

渋谷教育学園渋谷(渋渋:渋谷区)と渋谷教育学園幕張(渋幕:千葉市)は、一般の中学受験とは別に帰国生入試を以前から実施している。受験者やその保護者から渋ズ、渋谷系と呼ばれるなど、帰国生中学入試業界ではずぬけた存在だ。

画像=渋谷中学高等学校「INFORMATION BROCHURE 2023」(Web用簡易版)より
画像=渋谷中学高等学校「INFORMATION BROCHURE 2023」(Web用簡易版)より

「渋幕、渋渋ともに、一般受験でも最難関校です。そこにグローバル教育の先駆者としての先進的なイメージが加わり、帰国受験界では無双状態です。帰国で渋ズに受かるのは、一般受験で開成、桜蔭に受かるレベルと言ってよいでしょう」(塾関係者)

「東京大も海外トップ校もどちらも狙えるというのが魅力」(受験生の保護者)

1月に実施された2023年度の渋渋の英語入試は倍率4.9倍、渋幕は4.0倍と、入試難易度・倍率ともに高く、今年も相当な狭き門だった。

何より驚くのは、その出題内容の難易度だ。