高齢になっても毎日幸せに生きるにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「97歳で亡くなった画家の熊谷守一さんの晩年は、自宅の庭より外に出ずに、庭で草木、虫、鳥や空を眺めて、夜に絵を描いて過ごしていた。高齢だと少しずつぼんやりしてくるが、それを落ち込まないで日々の季節の移ろいや生活を楽しむために、ひきこもりの隠居になってもやれるインドアの趣味を50、60代から培っておくことが大事だ」という――。
※本稿は、和田秀樹『100歳の超え方』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。
午前中は妻と碁を打ち、昼寝。夜はアトリエに籠る生活
私の好きな画家のひとりに熊谷守一さんがいます。晩年に描いた明るい色彩の蝶や鳥の絵があります。正直、子どもが描けるような線です。でも、そういう絵を見ているとほんわりとしてきます。
熊谷さんは、97歳で昭和52年に亡くなりました。『へたも絵のうち』(平凡社)という自伝がありますが、それは91歳のときに日本経済新聞の「私の履歴書」に掲載されたものです。晩年は自宅の庭より外に出ずに、庭で草木、虫、鳥や空を眺めて、夜に絵を描いて過ごしていました。
熊谷さんの晩年は『モリのいる場所』という映画になっていて、山﨑努さんが熊谷守一役、妻役は樹木希林さんが演じています。もし、まだならぜひ観てみてください。
熊谷さんは、朝起きて午前中は妻と碁を打ち、昼寝をして、夜にアトリエに籠るという生活を何十年も続けていたそうです。昼間は庭を眺めぼんやり過ごしていました。
忙しく働いてきた私たちは、ぼんやり過ごすことが苦手です。ぼんやりすることは無駄だと思いがちになっています。効率よく物事をこなしていく人が優秀だと思われてきました。そう考える癖がなかなか抜けません。
高齢になっても、あれやこれやスケジュール表に予定がないと安心しない。スケジュール表に「病院の予定しかない。情けないです」と落ち込む男性がいます。何かやらなくてはと、草取りをして片づけて孫のお祝いを買いに行って、1万歩歩いて、運動もして、と生活がノルマだらけになっていないでしょうか。