「ひとりを楽しめる自分」をつくる

先の記事でも触れましたが、100歳近くなると友達はまわりからいなくなります。

心配して訪ねてくる人はいても、孤独になっていくのは必然なことです。老齢期に入るときに必要なことはひとりでいる力をつける、ひとりでも楽しめる技を持つことだと思っています。

本当は、ひとりで楽しめる力は子どもにも必要です。

昨今、いじめやSNSの被害や若年者の犯罪のいろいろなものの底にはさびしさがあると思っています。人とつながりたいと友達やSNSに依存しがちになります。

「ぼっちが怖い」「ぼっちと思われたくない」という言葉もよく耳にします。こういう体質と性格のまま大人になり高齢になると、やっかいな高齢者になることでしょう。

そう考えると「オタク」というのは、生存的には強い性質を持っているのかもしれません。時流に流されずに好きなものは好きなのです。ひとりで自分が撮った写真を眺めていれば幸せです。思い出も蘇ってきます。

Fさんは若い頃から鉄道ファンでした。青春18きっぷで日本の鉄道は全部乗りました。

子育ても終わり、お金に余裕ができてからはカメラに凝りだして、珍しい写真を撮りに行きます。それをパソコンで整理して楽しんでいます。

写真を撮るシニア男性
写真=iStock.com/kumikomini
※写真はイメージです

子どものような心と好奇心を持ち続ける

娘に言われたそうです。「そんなにお金をかけて写真を撮っているのなら、コンテストに出せば」と。でも、別に人に見せるためでもないし、人の評価がほしいわけでもないとFさんは答えました。

「それなら、せめて家族や友達に見せてよ」と娘さんに言われて、ブログの開設の仕方を教え込まれたそうです。四苦八苦してブログに写真をあげると、孫が「旅に出かけたくなった」とコメントをしてくれるそうです。

その後、病を持ち、ひとり暮らしの生活をすることに精いっぱいで、新たな写真は撮れなくなりました。今は、昔の写真を少しずつブログに載せて思い出をつづっているそうです。

「もしかしたら、これだけが私の形見になるかもしれないけど、けっこう大変な作業になっています」と話していました。Fさん亡き後も、Fさんの思い出はブログに残るのです。

簡単にひとりを楽しめる自分になるといっても、高齢になってからは急にオタクになれないと言われたこともあります。私も若い頃から趣味を持っていて継続しているのが理想とは思います。

しかし、70代でも80代でも何かにはまる人はいます。そのためには子どものような心と好奇心が必要なのかもしれません。

70代でアイドルや韓流ドラマに夢中になる人もいますし、囲碁を始める人もいますし、薔薇ばらを育てはじめる人もいます。どうぞ、ひとりの時間に機嫌よく過ごせる自分を開発していってください。