家の中にも外にもごみがあふれる「ごみ屋敷」はなぜ生まれてしまうのか。産業医で精神科医の井上智介さんは「ごみ屋敷に代表される、ものをため込んで捨てられない、生活環境が悪化しても無頓着になるといった、いわゆる『ディオゲネス症候群』の人は、一人暮らしの高齢者に多い。誰でもなる可能性があるので、『うちの親はきれい好きだから』と油断しないほうがいい」という――。
ゴミや不用品であふれている庭
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ごみ屋敷化や動物の多頭飼い「ディオゲネス症候群」

ものが片づけられず、ごみを捨てずにため込んで、家を「ごみ屋敷」にしてしまう一人暮らしの高齢者がテレビなどで取り上げられることがあります。

ものが捨てられない、身の回りのことができず生活環境が荒れてしまう、面倒がみられないほどに多くの犬や猫などを飼い、家の中が汚れたり臭くなってもかまわなくなってしまう。これらは「ディオゲネス症候群」と呼ばれています。「老年期隠遁症候群」や「ごみ屋敷症候群」と呼ぶこともあります。

ディオゲネス症候群の特徴は、大きく3つあります。

①セルフネグレクト

1点目が、セルフネグレクト、つまり、自分自身のことを構わなくなる、自分が快適な状態を保つことを放棄してしまうことです。身の回りの衛生状態をキープしようとしなくなり、長期間入浴せず、全く着替えなくなります。また、食事に関しても栄養管理に無頓着になり、虫歯やケガなども放置するようになります。

②ものをためこみ、生活環境が劣悪になる

ものを片づけたりしなくなり、ごみを捨てたりもしなくなります。新聞や郵便物が山のように積んであったり、賞味期限切れの腐った食べ物が、冷蔵庫だけでなく、そこらじゅうに置きっぱなしになったりします。また、明らかにごみと思われる空き瓶や空き箱などの、不要品もため込んでしまい、生活空間を埋め尽くしていきます。

動物の多頭飼育も該当します。面倒をみきれないほどの犬や猫などの動物を飼い、その糞尿が放置されていて、生活環境がさらに劣悪になる場合もあります。

③自覚症状の欠如

誰が見ても衛生状態や健康状態が深刻な状態になっていても、本人は特に問題意識を持ちません。

ごみをため込めば、見た目が悪いだけでなく、異臭もしますし、火事のリスクもでてきます。道路や隣家にまでごみが侵食することもありますし、周囲の人には大変な迷惑がかかります。多頭飼育の場合も同様です。しかし、どれだけ近隣から苦情が来たりしても、本人は「迷惑をかけている」という自覚がありません。