ソウル大融合科学技術大学院長(韓国大統領候補)安 哲秀(アン・チョルス)
1962年、釜山生まれ。ソウル大学医学部在籍中、コンピュータウイルス対策ソフトを開発。95年にソフト会社を起業し、ワクチンを無料配布して話題を集めた。その後米ウォトン・スクールでMBA取得。2008年大統領直属未来企画委員。11年より現職。
きらきらしている。出馬表明演説の最後、「未来はすでにここにある。ただ行きわたっていないだけだ」と、SF作家のウイリアム・ギブスンの言葉を引用した。臆面もなく未来と希望を語り、対立候補に政策統合を呼びかける。引退した大統領が自殺したり投獄されたりしてきた韓国政治の陰湿さを微塵も感じさせない、青臭いまでの清潔さ、輝かしさが格差の底辺であえぐ若者たちの心をつかんだ。政治家としてはズブの素人でありながら、与党候補で韓国初の女性大統領候補・朴槿恵候補の前に立ちはだかる。
釜山の裕福な医師家庭に生まれ、自らもソウル大学医学部で学位をとり医師となった。病院勤務の傍らアンチウイルスソフトを研究開発、退職してコンピュータセキュリティ企業アンラボを起業。米国でMBAも取得した。医師、起業家、経営者。10冊以上の著作も出版し、慈善活動家でもある。野党票を分ける民主統合党の文在寅候補と候補一本化で合意を得れば、ここに政治家の肩書が加わるはずだ。
「既成政党政治からの脱皮」を掲げる点が共通していることから、一部日本メディアは「韓国の橋下徹」とも呼ぶ。しかし独裁的リーダーシップを訴える保守派の橋下氏とキャラクターは全く違う。安氏は育ちのよさを滲ませるインテリ然としたリベラル派の穏やかな言葉を使い、韓国メディアが「癒やし系」と形容するソフトな語り口で、「分裂より統合」「専門家を糾合する水平的リーダーシップ」を訴える。
対北朝鮮政策も対話重視、盧武鉉時代に輪をかけた対北包容政策となる。当然、そのアマチュアリズムと軟弱さが危ういと評する声もある。だが、日韓関係の冷え込みに苦しむ日本にとっては、彼の未来志向こそ、関係改善の鍵と期待を寄せるのだ。