政権が崩壊する火ダネは「タカ派vs.テクノクラート」
プーチン政権はサンクトペテルブルク出身者や旧ソ連国家保安委員会(KGB)などのシロビキ(武闘派)が中枢を固めてきたが、近年、ミシュスティン首相、キリエンコ第一副長官、ソビャーニン市長、フスヌリン副首相、ワイノ長官ら、非サンクト派のシビリアンが台頭してきた。
独立系メディア、「メドゥーザ」のアンドレイ・ペルツェフ記者は、「サンクト派を政権の守護者とすれば、非サンクト派は政権の建設者だ。プーチンは自身のレガシー(遺産)を意識するようになり、専門知識やプロジェクト推進能力を持つ人脈を登用した」と分析する。
政権延命を優先するサンクト派に代わって、能力と実績重視の新テクノクラートが台頭するとの見立てだ。その場合、両者の間で利権闘争や軋轢が深まる可能性がある。
この点では、大統領のスピーチライターから反体制派に転向したアッバス・ガリャモフ氏も、「クレムリンは過激な手法をとるタカ派と、穏健な妥協を求めるテクノクラートに分かれている。タカ派は数が少ないものの、緊密に連携し、支配的立場にある。多数派のテクノクラートはこれに不満を抱いており、対立が拡大するだろう」とし、「政権を崩壊させる火ダネはエリート内部の対立だ」と指摘した。
「高齢者は去り、若手に道を譲るべきだ」
プーチン氏は12月14日の4時間にわたった国民対話・記者会見で、ウクライナの戦況が優位に展開し、23年の経済成長率も3.5%の見込み、給与増、失業率低下で安定していると強調した。
しかし、会場のスクリーンには、「2030年の選挙にも出馬するのか」「高齢者は去り、若手に道を譲るべきだ」「国営テレビが伝える豊かなロシアには、どうすれば行けるのか」など、国民から寄せられた不満の声も映し出された。
政権は5期目を前に、中絶の規制、LGBTQ運動の弾圧、愛国主義教育、反体制派の一掃など、保守的な政策を一段と強化している。ウクライナ侵攻の長期化に伴う閉塞感もあり、国民の不満が鬱積していく可能性がある。