ナンバー2である首相はサプライズ人事になる?

政権内リベラル派から極右に転向したメドベージェフ前大統領は、「大統領の信頼が厚く、一度大統領を務め、現実的な候補」としている。ミシュスティン首相は西側の経済制裁の中、テクノクラート(技術官僚)を束ねて経済を安定させた。クレムリンの政治戦略を担当するキリエンコ氏はかつてリベラル派だったことや、ウクライナ風の名前がマイナス材料となる。

「後継者」は11月30日、大統領選後にミシュスティン首相が別のポストに異動する可能性が政権内で議論されているとし、首相の後任候補として、①フスヌリン副首相②ソビャーニン市長③マントゥロフ副首相兼産業貿易相――ら9人のリストを公表した。

フスヌリン副首相は建設業界のドンとされ、インフラ建設で実績を挙げた。地味ながら、プーチン氏はこれまでも、フラトコフ、ズブコフ、ミシュスティン各氏ら、無名の人物を首相に抜擢し、周囲を驚かせてきた。

首相は大統領が職務執行不能に陥った時、大統領代行に就任し、3カ月後の大統領選を統括する憲政上のナンバー2だ。高齢のプーチン氏に不測の事態が起きる可能性もあり、首相ポストの行方は後継問題で重要な意味を持つ。

ロシア社会が「プーチン後」に注目している

「ADI19」という新興ネットメディアは10月末、政治アナリストの話として、大統領後継はデューミン知事とパトルシェフ農相の2人がフロントランナーだと伝えた。

ボディーガード出身のデューミン知事(51)は国防次官などを歴任。忠誠心が強く、大統領の懐刀とされる。「プーチンが自らの路線を継がせるため、権力の座を譲るのは容易だ」という。

政権ナンバー2、パトルシェフ安保会議書記の長男、パトルシェフ農相(46)は、経済博士号を持つ銀行家で、連邦保安庁(FSB)にも籍を置くサラブレッド。「最側近の長男には、安心して権限を委譲できる」としている。

ただし、プーチン氏は健康が許す限り権力を維持する構えで、2人はピンチヒッター要員だろう。とはいえ、こうした後継論議がロシアのメディアで報じられること自体、社会がプーチン後を意識していることを示す。