旧統一教会は本部のある韓国ではどんな存在なのか。ノンフィクションライターの窪田順生さんは、これまで日本のメディアが取材できなかった韓国本部の“聖地”に潜入した。窪田さんの新刊『潜入 旧統一教会 「解散命令請求」取材NG最深部の全貌』(徳間書店)より一部を抜粋して紹介する――。(第1回)
教祖を模した“黄金色の巨大な像”
私の目の前に、文鮮明氏と韓鶴子氏がいる。
言わずと知れた、宗教団体「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の創立者と、現在は教団の総裁をしている妻のことだ。文氏は両手を下げて、やや広げた姿で、穏やかな笑みを浮かべて立っている。そして、その傍らには、韓氏がやはり穏やかな微笑みを浮かべて寄り添っている。
といっても、これは本人たちではなく高さは3~4メートルほどの立像だ。この黄金色の巨大な像は「天地人 真の父母像」と呼ばれるもので、世界中から「聖地巡礼」に訪れた信者たちは、この像まで5メートルほどのところまでやってきて、自身の信仰の「原点」に立ち戻るのだという。
「一般の信者の方もここまでしか入れませんが、今日は特別に許可をもらっています。もうちょっと近くでご覧になってください」
そのように私に促してくれたのは、韓国の教団本部の幹部職員である。彼に言われるまま前に進んで、「天地人 真の父母像」の目の前までやってきた。すると、視界に飛び込んできたのは、頭上に広がる巨大なドーム型の天井と、そこに描かれたキラやかな宗教画だった。若い時の文氏と韓氏の姿や、合同結婚式の参加者たちに祝福をしている2人の姿などが描かれている。
「あの天井画には、ご夫婦がこれまで歩んできた信仰の道が物語として描かれています。この建物を外からご覧になった時に中央にドーム型の屋根が目についたと思いますが、あの天井がまさしくそこです。つまり、真の父母像というのは、この建物のちょうど中心に置かれているということですね」