総工費500億円の“聖地”

この建物とは「天正宮博物館」。韓国・ソウルから北東約60キロに位置する京畿道加平郡の教団施設が点在する孝情天苑団地の中にある、いわゆるこの教団の「聖地」だ。

「真の父母が人類や国と相対する中央庁」だという天苑宮
「真の父母が人類や国と相対する中央庁」だという天苑宮(出所=『潜入 旧統一教会』)

天聖山という山の中腹を切り拓いたところに建設された天正宮博物館は、巨大な柱やアーチが特徴的な新古典主義建築の白亜の建物で、アメリカ・ワシントンにある連邦議会議事堂と非常によく似ている。総工費について教団側は公表していないが、マスコミ報道によれば、日本円換算で約300~500億円がかかったという。そんな「白亜の宮殿」については、情報番組や報道番組でご覧になったことがある方も多いだろう。

天正宮博物館から「旧統一教会タウン」を見下ろしてみると、ひときわ目立つ大きな建物があった。

2023年5月にこの地でいわゆる「合同結婚式」が行われた際は、教団を追及しているジャーナリストの鈴木エイト氏をはじめとして日本のメディアが大挙して押し寄せて、この天正宮博物館を遠くから撮影して、「日本の信者からの献金でつくられた豪華絢爛けんらんな施設」「その大きさに圧倒されます」などと興奮気味にレポートしていた。

ただ、そんな大騒ぎをしていたわりに、彼らは天正宮博物館に入ることはおろか、近づくことも許されなかった。

K-POPアイドルがコンサートで利用するホールも

《教団施設周辺では特に日本のメディアを警戒する姿勢がみられました。取材に行ったミヤネ屋スタッフは一般道からの撮影であっても教団側スタッフに制止され、スタッフによると「一度注意を受けると教団関係者がずっとついてきて、何かしようとすると止められるという状況が続いた」といいます》(情報ライブ ミヤネ屋公式ホームページ 2023年5月10日)

そんな日本のメディア立入禁止の「教団施設」の中に私は入っている。

世界平和統一家庭連合の日本の教会本部と粘り強く交渉を続けてきた結果、韓国の教団本部から「特例」として取材許可を得ることができたのだ。

天正宮博物館はその名の通り、教団の教祖である文鮮明氏の足跡を展示しているミュージアムだ。しかし、それだけではなく、この信仰をもつ人々にとって、極めて重要な意味をもっている「聖地」だ。

「あれは、清心平和ワールドセンターというホールですね。2万5000人を収容できて、合同結婚式など教団関連のさまざまなイベントが開催されるだけではなく、ミュージカルやK-POPアイドルのコンサートなどにも使用されています」

埼玉にある「さいたまスーパーアリーナ」の最大収容人数が2万7000人で、横浜にある「横浜アリーナ」が1万7000人なので、2万5000人収容というと、ちょうどこれらの2つの中間くらいの大きさだ。宗教団体が、これほどの大規模の室内アリーナ型の会場施設を保有していることにちょっと驚いた。