カリスマ逝去がもたらす宗教界・政界の大変化
創価学会の名誉会長池田大作氏が11月15日に亡くなったと18日に報じられた。今年3月には幸福の科学総裁、大川隆法氏の訃報が届いていた。戦後の新宗教を牽引したカリスマの逝去に、宗教界や政界に激震が走った。人口減少や宗教2世問題などによって、新宗教が弱体化しつつあるなか、今後の日本の宗教を取り巻く環境がどうなっていくのかを考えてみる。
池田氏の逝去が伝えられた18日。くしくも私は東京都八王子市にいた。この日は創価学会の創立記念日にあたっていた。八王子は、池田氏主導による創価学会拡大の一大拠点となった地である。学会の総本部があるのは都心の信濃町だが、ここ八王子にも重要施設がひしめき、多くの学会関係者が居住している。学会員のための仏壇店なども点在する。
創価学会が八王子に進出する嚆矢となったのは創価大学の開学である。「人類の平和を守るフォートレス(要塞)たれ」。この建学の精神を掲げ、1971(昭和46)年、創価大学が中央自動車道八王子インターチェンジに近い場所に開かれた。池田氏にとって、子弟のための教育機関の整備は悲願であった。当時は第2次ベビーブームの最中。将来の会員育成こそが創価学会の未来を左右することを見込んでのことである。
新宗教系の大学は、天理教の天理大学、金光教の関西福祉大学など限られている。ちなみに幸福の科学はハッピー・サイエンス・ユニバーシティを2015(平成27)年に開学させているが、こちらは文部科学省の無認可校である。
創価大学と、他の伝統宗教系大学とが異なる点は、仏教学部や神学部などの宗教系学部がないこと。これは徹底した平和主義を唱える創価学会が、過去の戦争の遠因となった「宗教教育の強制」を嫌ったからといわれている。
池田氏が「フォートレス」と位置付けたように、創価大学開学を皮切りにして八王子に巨大な教団施設が次々と建設されていく。1983(昭和58)年には、創価大学の向かいに東京富士美術館を開館させる。同美術館はおよそ3万点もの収蔵品を誇り、ラ・トゥール『煙草を吸う男』(17世紀)や、マネの『散歩』(19世紀)など名だたる名画も少なくない。なお、巨大な新宗教団体が美術品を蒐集し、展示している例は、世界救世教のMOA美術館(静岡県熱海市)や、神慈秀明会のMIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)など各地にある。
池田氏の訃報の翌日、東京富士美術館を訪れると、『世界遺産 大シルクロード展』を開催していた。多くの来場者の姿があったが、同館公式サイトで訃報を伝えた以外は普段と変わらぬ様子であった。