「墓じまい」に伴う「離檀料」というものは存在しない
日本の仏教宗派のひとつ、曹洞宗が「墓じまい」に関して、異例の表明をした。テレビや雑誌などで「墓じまい」が扱われる際のトラブル事例として「離檀料が必要で一般的には○○万円」といった紹介がなされることがあるが、曹洞宗は公式サイト上で「離檀料に関する取り決めはない」「宗門公式として墓じまいという用語は用いていない」などと、打ち消した。「終活」の流れの中での「墓じまい」と、それに伴う「離檀料」が既成事実化していくことへの危機感の表れとみられる。他方で、菩提寺と檀家との間で、依然としてマネーの問題が噴出しているのも事実だ。
全国におよそ7万7000ある寺院の中で、曹洞宗は1万4500カ寺ほどを占めており、わが国最大の仏教宗派である。それだけに、曹洞宗の発言は仏教界へ与える影響が大きい。
曹洞宗内部で行政機関の役割をする宗務庁は10月25日、公式サイト上で「離檀料・墓じまいに関する報道について」と題する見解を表明した。曹洞宗はこの問題に、強い危機感を抱いている証左といえる。宗務庁が出す声明は、世界各地で起きている戦争への非難や、災害への義援金の募集、宗門の周年事業など、概して大所からの見解が多い。「墓じまい」「離檀料」のような、世俗的な動向について宗門の見解を述べることは異例だ。
ちなみに「離檀料」とは、檀家が菩提寺を離れる際、一部の住職による金銭の要求のことである。離檀料には法的な規定や拘束力はないが「払えないなら、墓じまいをさせない」などと住職が強気に出て、トラブルになるケースがみられる。
曹洞宗はサイトの冒頭で、このように述べている。
「昨今、テレビ、雑誌等にて、離檀料・墓じまいという言葉を用いた報道がなされています。特に、『離檀料は一般的に○○万円』というように、あたかも離檀料に相場があるかのような報道や、寺院維持や住職の生活保障のために離檀料を請求する寺院があるかのような意見が述べられることがあり、誤った認識が広がることを懸念しております」
その上で「離檀料」に関しては、「宗門公式としての離檀料に関する取り決めはない」「檀信徒から、離檀料を頂くようになどという指導も行っていない」と関与を否定。その上で、「離檀に当たり、これまで先祖代々がお世話になった感謝の気持ちとして、布施を納めてくださる場合があるが、地域の風習や慣行、寺院と檀信徒との関係性において、当事者間の話し合いにより決まるものと考えている」と述べている。
続いて「墓じまい」についても、「宗門公式として墓じまいという用語は用いていない」との立場を明確にしている。
離檀料に関しては曹洞宗だけではなく、他の仏教宗派も同様の考えである。宗門から末寺に対し、離檀料を設定して、徴収するように指導するようなことはありえない。しかし、一部の寺院が「暴走」し、多額の離檀料を徴収するケースがみられる。そのため、宗務庁が釘を刺した形だ。だからといって、宗門がそうしたあこぎな住職に対し、よほどのケースがなければ懲戒できないのが現実だ。