日本には特定の宗教への信仰を持たない「無神論者」が多い。だが、欧米ではこの言葉は極度に否定的なイメージでとらえられている。北海道大学大学院の岡本亮輔教授は「信仰を重視する欧米では、無神論者は反社会的でためらいなく殺人や虐待を行う危険人物とみなされる。日本とは言葉の意味がまったく異なってしまう」という――。
日本は世界トップクラスの無神論国家
「あなたは神や仏の実在を信じていますか?」
家の宗派や好みの寺社を尋ねているのではない。「この宇宙のどこかに神や仏と名指される実体が存在する」と信じているかを訊いているのだ。このとき、あなた自身はどのように答えるだろうか。
実は、この質問は日本の宗教の特徴を考える上で重要な意味を持つ。ここでは無神論者に対するイメージを手がかりに考えてみよう。
国際的には、日本は世界トップクラスの無神論国家とされる。さまざまな調査があるが、だいたい1位は中国で、日本はチェコやスウェーデンと2位争いをしている。ラグビーでいえばティア1から外れることはない。2017年の調査では、日本の無神論者の割合は87%で世界2位だ。1位の中国(91%)とは僅差であり、3位のスウェーデン(78%)、4位のチェコ(76%)に10%前後の差をつけている。
あなたの実感としてはいかがだろうか。中国では国策として宗教が規制されるし、チェコは旧共産圏だ。スウェーデンが含まれる北欧は、キリスト教会の衰退が世界一激しい地域である。日本はこうした国々と同じような宗教状況にあるのだろうか。