解散命令請求後、旧統一教会はどう動くのか
政府は近日中にも、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求を実施する見通しだ。
旧統一教会を巡っては、安倍晋三元首相の暗殺事件をきっかけにして、高額の献金問題や「宗教2世」問題などが次々と露呈。文部科学省はこれまで、慎重に解散へのステップを踏んできたが、解散の要件となる「組織性・悪質性・継続性」の3要素があったと認定し、ついに最終段階へ入った。
だが、これは後述するように見方を変えれば、「潜伏カルト」への第一歩を踏み出したともいえる。一定期間をおいて、宗教法人の乗っ取りも考えられる。「宗教法人解散」は諸刃の剣である。長期にわたる監視が必要だ。
政府はこれまで、宗教法人法に基づく旧統一教会に対する質問権を行使してきた。だが、教団側は消極的で質問の5分の1に回答してこなかったという。政府は元信者らに対するヒアリングなどを重ねてきた。
旧統一教会の信者らは、裁判所に請求しないよう嘆願書を提出するなどの抵抗をみせている。だが政府は近く、請求に関する法人審議会を開催。近く、東京地方裁判所に解散請求を行う。
その後は、裁判所の判断を待たねばならないが、旧統一教会の法人解散は不可避な情勢といえる。民事上の不法行為での宗教法人解散がなされたとするならば、史上初の事例となる。そのため、政府は慎重に慎重を期して、手続きを進めてきた。
過去の宗教法人解散は、地下鉄サリン事件などの凶悪事件を犯したオウム真理教と、悪質な霊感商法で詐欺を繰り返した明覚寺のみ。宗教法人が刑法上の罪を犯した事例は枚挙にいとまがないが、先述の2例以外は解散には至っていない。
例えば今月に入っても、宗教法人の不正が明るみになっている。大阪市阿倍野区にある吉田兼好ゆかりの正圓寺の元代表役員ら3人が、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで逮捕された。容疑者らは、老人ホームの建設を計画していたが、資金繰りに行き詰まって寺所有の土地を売買に関して虚偽の登記をしていた。本件は刑法上の不法行為にあたる。
この正圓寺の場合、容疑者の起訴・有罪をもってしても、宗教法人解散とまではいかないだろう。組織ぐるみの犯罪か、悪質な案件であるか、継続的に不法行為がなされているか。社会の安寧秩序を著しく乱している団体かどうかが、解散の最低限の要件となり、慎重に見極めなければならない。憲法20条の「信教の自由」は、それほど重いのだ。権力の宗教への介入は、よほどのことを除いて、原則的にはあってはならないという認識が必要だ。