サン・ピエトロ大聖堂にそっくりの建築物も

そんな芝生広場に立ってみると、古代エジプトのオベリスクのような巨大な塔が目の前にそびえ立っていた。建物と広場を挟んだところに回廊が飛び込む。

「あれは天聖塔と言って、24時間光り輝くことで天一国における灯台の役割を果たします。また、宗教的な意味合いでいうと、ロウソクという意味もあります。ロウソクは自分の体を溶かしながらまわりを明るくしますよね。我々も自分を犠牲にしてでも、世界を明るく照らしていきたいという願いが込められています」

説明を聞きながら、この風景をどっかで見たはずだと必死に記憶をたどったところ、どこで見たのか思い出した。

バチカンのサン・ピエトロ広場である。巨大なサン・ピエトロ大聖堂の前にある石畳の広場も、大聖堂から伸びる回廊にぐるっと囲まれていて、広場には真ん中にオベリスクが建っている。芝生と石畳という違い、またオベリスクがある場所が若干、異なっているものの、基本的なレイアウトはよく似ている。

天正宮博物館が米連邦議会議事堂とよく似ていると指摘されているように、天苑宮もカトリックの総本山であるサン・ピエトロ大聖堂を意識したのではないか。

実際、天苑宮は今後、教団の総本山的な役割を果たし、世界中の旧統一教会信者が集う場所になっていくという。サン・ピエトロ大聖堂もやはりカトリックの総本山で、世界中の信者が訪れる。同じ機能なので、同じようなデザインになっているのかもしれない。

著名な美術家の作品を集めて…

そんなことを考えていたら、キムさんが芝生広場の先を指さして語り始めた。

「実はこの天苑宮には、日本のメディアが知らない、もうひとつ大きな役割があります。それは世界最高水準の芸術作品を展示して、信者以外の人々にもそれを体験していただく、美術館としての役割です」

思わず耳を疑った。なんとこの天苑宮の横に、併設される形で「美術館」がオープンする予定だという。

ここでは「中国で最も影響のある現代美術家」と呼ばれるアイ・ウェイウェイや、アメリカでビデオアートの第一人者として知られるビル・ヴィオラとペク・ナムジュン(ナム・ジュン・パイク)など世界中の有名芸術家の作品を展示するという。アートに関心がない人からすれば「誰?」という感じだろうが、現代アートが好きな人からすれば、ぜひ実際に鑑賞したいと願う「スター」揃いだという。

アイ・ウェイウェイ作「Sunflower seeds」。2011年。テート・モダン(タービンホール)でのインスタレーションの様子。何百万もの小さな手作り磁器が敷き詰められている
アイ・ウェイウェイ作「Sunflower seeds」。2011年。テート・モダン(タービンホール)でのインスタレーションの様子。何百万もの小さな手作り磁器が敷き詰められている(写真=CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「展示は館内だけではなく広場に隣接する、ハヌル公園という野外でも行われます。既に展示をされているものもありますよ。あそこに大きな鏡みたいなものがありますよね。あれはスカイミラーという作品です」

キムさんが、指差す方を見ると、芝生の上に巨大なカーブミラーのようなものが置かれていた。Googleで検索をしてみると、現代アートの世界的巨匠、アニッシュ・カプーアの代表的な作品だ。幅6メートルのステンレスを曲げた皿のような鏡で、空に向けられていることで、時間や場所によってまったく異なる景色を映し出す。日本でも2018年に大分・別府で期間限定で公開されて大きな話題となっている。