即完させず、でも満員にはするのが腕の見せどころ

これが、「即完幻想」です。「即完」だけでなく、先ほど「満員戦略」の話を書きましたが、「満員」「売り切れ」なども同様で、言葉だけを見て「すごい」と判断する方が本当に多いです。

お笑いライブに限らず、この「即完幻想」を逆に利用したビジネスのやり方が、いわゆる「品薄商法」で、意図的に商品の個数を抑えて、購買意欲を煽って、販売数を増やすというやり方です。

私はこの手法には疑問を持っていて、ライブでもゲームでもなんでも、「見たい方、欲しい方にしっかり行き届くこと」が理想的だと思っています。

なのでK-PROのライブは、キャパやチケット料金、出演メンバーの並びを考慮して、即完はしないように、それでいて最終的には満員になるように設計しています(コロナ禍は別です)。

意外に思われるかもしれませんが、K-PROのライブは、即日完売したことがあまりないです。もちろん即完は主催者としては目指さなければいけないことですが、即完確定を想定のもとに告知するのは、私は違和感を覚えてしまいます。

見たい人に届けられないのは反省すべきこと

たとえばEXITが、芸歴2年目の2019年に「パシフィコ横浜」で単独ライブをやって即完させていましたが、伺った話だと吉本興業の関係者の方も想定外だったそうで、そういう「チャレンジした上での即完」はすごく格好いいと思います。ただ、はなから即完がわかっているキャパでやるのは、私は、格好いいとは思いたくないんです。

なぜなら即完はありがたいことですが、「反省すべきこと」だとも思うからです。

見たい人に届けられないというのは、絶対によくないことだと思います。配信のチケットも販売されるライブであればまだ救われますが、やはり「生の臨場感」に勝てるものはないですよね。

人気が高くてチケットが取れないコンビの場合、ネタの面白さを全体に行き渡らせるために劇場のキャパにこだわりがあるのもわかるのですが、たとえば最終公演や追加公演だけでも、どでかいホールでやっていただくこととかできないだろうかなどと願っています。

商品でもなんでも、欲しい人のもとにはなるだけ届くような努力を、企業側はするべきではないのかな、と思います。