「味の濃い系」のラーメン店がつぶれない理由

私が「単品の食事は避けたほうがいい」と申し上げても、それでも「カップ麵は便利で、そこそこおいしい。ときどきは食べたい」という人もいるでしょう。

実際、高齢者には、「依存症」になったかのように、カップ麵を常食している人がいるものです。カップ麵は依存症を招きやすい食品です。その理由は「味が濃い」からです。

私は、根っからのラーメン党で、40年以上、いろいろなラーメン店を食べ歩いてきましたが、私の見るところ、「味の濃い系」のラーメン店は、まずつぶれません。味が濃いと、そのラーメンに依存する人、要するに「常連」が増えるからです。

一方、あっさり系のラーメン店は、かなりおいしい店でも、その味のように、あっさりつぶれることがあります。その理由は、依存症者(=常連)が増えにくいからだと、私は見ています。

カップ麵に話を戻すと、今は、各メーカーが添加物量などに留意しているので、毎食、カップ麵を食べていても、それで「命に関わる」ことはありません。

他の食品も含めて、加工食品に多少の発ガン性があるといっても、それは100万人に1人発症するかどうかの確率です。

とはいえ、むろん「毎食、カップ麵」という食生活をおすすめするわけにはいきません。カップ麵を常食すると、摂取する食材の種類が減り、栄養バランスが偏るからです。そうした単品型の食生活は、心身の老化を早めます。

また、同じものばかりを食べていると、「慢性型の食品アレルギー」になるリスクも高くなります。

というような理由から、単品型の食生活は避けたほうがいいのですが、「それでも、カップ麵を食べたい」という人には、自分で「具材」をトッピングすることをおすすめします。

今は、スーパーに行くと、煮玉子やメンマ、焼き豚など、ラーメン用の具材がいろいろと並んでいます。それらをカップ麵にトッピングするのです。そうして、食材の種類を増やせば、高齢者が陥りがちな「単品の害」をある程度防ぐことができます。

ラーメンスープを飲み干しても、塩分の摂りすぎにはならない

私は、ラーメン店に足を運んだときは、基本的に「ラーメンスープ」を飲みきっています。先日も、若い知人とラーメンランチをともにした際、私がいつものようにスープを飲み干すと、「先生、医者の不養生ですよ。最後まで飲んでいいんですか」と“注意”されました。

私が「あなたは飲みたくないの?」と問い返すと、「そりゃ、飲みたいですけど……。でも、塩分の摂りすぎになりませんか」と、訊きかれました。

「なりませんよ」――私はそう答えました。

その理由は、専門的にいえば、「高齢になると、腎臓が塩分を貯留する能力が落ちるため、むしろ塩分不足、低ナトリウム血症のほうが心配だから」ということになります。同症は、血液中のナトリウム濃度が不足する症状で、悪くすると、意識障害や痙攣を引き起こします。

そもそも、今は、どのラーメン店でも、塩分や化学調味料の使用を控えています。また、ラーメンスープには、さまざまな食材のエキスが溶け込んでいます。それを飲まないのは、栄養面からみて、むしろもったいないことなのです。

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そもそも、私は、「本当は飲み干したいのに、『我慢』する」という考え方こそ、「不健康」だと思います。塩分の害以上に、「我慢の害」が健康寿命を縮めることが多いからです。

不必要な我慢をすると、ナチュラルキラー細胞の活性が落ち、免疫力が低下して、ガンをはじめとする大病を招くリスクが高まります。

そもそも、「○○を食べたい」という欲求は、体が「タンパク質不足」や「脂質不足」など、何らかの「不足」を察知したことによって生じていることが多いのです。そのため、食べたいものを我慢すると、その「不足」を助長し、健康長寿を阻害しかねません。

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