2023年上半期(1月~6月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2023年5月10日)
部下や同僚がメンタル不調になる前に助けることはできるのか。年間1000人以上の面談を行う産業医の武神健之さんは「一見安定した状況でも、急に潰れる社員はいる。そんな社員には3つのパターンがある」という――。
ソファーでゴロゴロしている男性
写真=iStock.com/Peopleimages
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安定した状況でも潰れる社員はいる

こんにちは。産業医の武神です。新型コロナ感染症も法律上はインフルエンザと同じ扱いとなり、私のクライエントでは在宅勤務、出社勤務、ハイブリッド勤務など、それぞれの働き方で落ち着いてきている社員がほとんどだと感じています。

このような安定している状況でも、急に潰れてしまう社員は必ずいます。今日は、そんなもうすぐ潰れる社員によくある特徴について、私の産業医面談から得られた3つのパターンからご紹介したいと思います。

「体力回復のため」週末の外出をやめたAさん

1つめは、週末に1日は外出していた人が、両日とも家で休養するようになったときです。

Aさんは20代後半の一人暮らしの男性社員でした。週末は、土曜日は友人たちとフットサルやドライブ、登山など外で遊び、日曜日は掃除や洗濯物、勉強や食べ物の作り置きなど家で体を休めながらゆっくり過ごすことをルーチンとして過ごしていました。

半年前に会社の大きなプロジェクトメンバーに抜擢されました。プロジェクトは忙しく、平日は過去に経験したことがないほど遅くまで残業をするようになりました。日中もミスは許されないうえにスピードが求められる業務時間が連続し、2カ月ほど経つと自分が疲れてきていることを自覚し始めました。そこで、真面目なAさんは、土曜日に遊ぶことをやめ、週末は両方とも昼までは寝て、午後も家でゆっくり過ごして体力の回復に努めるように過ごし始めました。

3カ月後、Aさんは仕事でミスが目立ち顔色も良くないと、上司に勧められて産業医面談に来ました。覇気がなく、出社前は特に気分がすぐれないそう。食欲もなく、睡眠も「長時間ベッドにいるが疲れが全く取れていない」というAさんは、典型的なメンタルヘルス不調者でした。早急な医療受診を勧め、専門医の診察の結果、Aさんは休職することとなりました。

「週末の遊び」をやめてメンタルヘルス不調になる人は結構いる

仕事が忙しくなってきたから、しっかり体調を整えるために、週末に遊ぶのを積極的に控える、そしてその時間を家で休息することにする。一見、理にかなった過ごし方のように思えますが、こうやって最終的にメンタルヘルス不調になってしまう人は結構います。

週末2日とも家で過ごせば身体的な疲労や睡眠不足は回復するでしょう。しかし、そのような週末では、特に、今までは週末に外で積極的に過ごす(遊ぶ)ことでリフレッシュしていた人にとっては、気分転換ができず不十分になってしまいます。その結果、金曜日夜の気分をそのまま月曜日に引きずってしまうことになります。このような週末の過ごし方が2~3カ月続くと、多くの方の場合は潰れてしまいます。

気分転換ができていないことに加えて、週末の友人たちとの関わり合いがなくなるため、メンタルヘルス不調による症状が現れても、他人に指摘される機会がなく、本人も気がつかないまま悪化し、最終的に潰れてしまうのです。