30代半ばで派遣切りに

「愛知の工場は2年6カ月で派遣打ち切りになってしまいました。1週間の空きがあったけど静岡の、やはり自動車関連の工場に移されました」

時給はまったく同じで仕事内容も製造作業。

「ここは1年半ぐらい忙しかったのですが生産調整があって暇になりました。まず残業がなくなり、次に1日の勤務時間が90分減って6時間30分になるといった具合です。

最終月の労働時間は130時間まで減っていましたよ。月収は15万6000円ぐらいで手取りになるとやっと12万円ぐらいでした」

正社員も配置転換があったから、たかが派遣工が無事でいられるわけない。

「待機ってことにされまして、寮にこもっていました」

それでも世間的にはアベノミクスで好景気。人手不足もあったから1週間で次の派遣先を斡旋された。

「食品会社でしてね。同じ静岡県内にある冷凍食品の工場でコロッケだとか炒飯を作る工程で働いていました。ここも仕事量にばらつきがあり、多い月は30万円ぐらいの月収になるけど暇な月は20万円がやっとという感じだった」

ここも働けたのは2年9カ月。いい加減に腰を据えて働かせてくれと思ったがそれは不可能。だって派遣なのだから。

「工場のロッカー室に誰かが持ってきた求人情報誌が置いてあって、パラパラめくっていたら、派遣打ち切りになるその食品工場の求人情報が載っていた。具体的な会社名は伏せてあったけど場所、仕事内容、時給などを見ればここだと分かります。とても嫌な気分になりましたね」

ロッカールーム
写真=iStock.com/ED_DAR
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派遣会社の担当者には「もう10年」ということでクビ切り

この食品工場を出たあとは神奈川県にある精密機器メーカーの工場に移されて携帯電話の部品製造ラインに配置された。

「製品の最終チェックが担当業務でした。工場勤務だけどそれほどきつい仕事ではなかった。夜勤はなく残業も1日1時間から1時間半程度、だから収入は下がりました」

雰囲気は良かったし、派遣先の正社員とも親しくなれたのでもう少し働きたい気持ちがあったのだが丸2年経ったところで派遣終了となった。

「やっぱり年齢が問題なんでしょうか、その工場の派遣で40歳以上の人はいませんでしたね。自分も派遣がおしまいになる直前に35歳になっちゃいましたから。使う方としては若い人という希望があるのだと思います、仕方ない」

派遣会社の担当者に次はどこへ行くんだと尋ねたら「紹介できる仕事はない」という態度。「あんた、もう10年だろ。そろそろ辞めてくれないか」ということでクビ切りされたという次第だ。

「工場派遣の最後は使い捨てですからね。やらない方がいいし、やったとしても早く足を洗って次を考えないと。損をするのは自分なんだから。それは俺も頭では分かっていたんですが流されてしまった。失敗したと思います」

どうしてかというと派遣会社が上手く弱みを突いてくるから。

「失業しているとかフリーターやってますとかじゃ、部屋を借りるのもひと苦労なんです。工場派遣なら仕事と住まいがセットになっているから、採用されれば収入と住まいが確保できる。そうなると派遣の仕事は魅力です、何も持たずに寮に入れますから。交通費や生活応援資金を出してくれる派遣会社もありますしね」