ポジションが低い男性が結婚相手に選ばれにくいのはなぜか。雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんは「女性が正社員で働くことが当たり前となった今、夫側が仕事をそこそこにとどめる夫婦の組み合わせが増えてもおかしくない。しかし現状の日本の人事制度では、ヒラ社員でも年齢とともに給料が上がる。これでは、男性は50代になるまで昇給昇進の可能性をあきらめきれず、家庭重視の決断をしにくい」という――。
婚約届に記入する手元
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相手が見つかるかどうかという切実な問題

前回は、子育て世代の育児負担が減り、自由時間が増えるような変革を考えました。こんな方向に社会が変われば、「結婚してもいいな」「子どもも欲しい」と考える人が増えていくでしょう。

ただ、それでも大きな問題が一つ残ります。それは、「ふさわしい相手が見つかるか否か」という切実な話です。この時に、大きな障害となっているのが「昭和の結婚観」だと第10回目に書きました。

女性は「学歴や収入、役職などが自分と同等以上」の男性を求めがちです。それは、独身者調査などでも明らかになっています。かつての「女は短大、4大は行くな」「女は一般職、男は総合職」という社会であれば、世の中のそこかしこに「自分より学歴も収入も上」の男性がいたでしょう。

現在は女性の大学進学率が男性と同等になり、大手企業での採用数でもほぼ半数まで上がっています。必然、「自分より同等以上の男性」は減っている。当然、基準に適う確率は下がり、パートナーが成立しなくなっています。

学歴・仕事が男女平等に近づく中、本来なら結婚観も今流にアップデートしなければならないのですが、この点が遅れている。結果、生涯未婚率では、女性は高年収者が著しく高く、逆に男性は低年収者が著しく高いという非対称が起きています

男女間の見えない格差

でも、短絡的に「女の人も、相手の学歴や収入、職業、役職、企業レベルにこだわらずにパートナーを探せ」なんて言うべきではありません。昭和の結婚観がなくならないのは、今でも多くの面で、男女間には見えない格差(アンコンシャス・バイアス)が残っているからなのです。ならば、こうした見えない格差を一つずつ、取り除くことが、本当の解決策でしょう。

そう、これもアンコンシャス・バイアスという、やはり「心の問題」です。これから2回にわたりその処方箋を書いていきますが、初回は「仕事場面」での格差是正を考えます。人事制度の実務を詳細に書くので、専門外の方には戸惑いもあるかと思われますが、平易な説明を心掛けますので、ぜひともお付き合いいただきたいところです。