相手が見つかるかどうかという切実な問題
前回は、子育て世代の育児負担が減り、自由時間が増えるような変革を考えました。こんな方向に社会が変われば、「結婚してもいいな」「子どもも欲しい」と考える人が増えていくでしょう。
ただ、それでも大きな問題が一つ残ります。それは、「ふさわしい相手が見つかるか否か」という切実な話です。この時に、大きな障害となっているのが「昭和の結婚観」だと第10回目に書きました。
女性は「学歴や収入、役職などが自分と同等以上」の男性を求めがちです。それは、独身者調査などでも明らかになっています。かつての「女は短大、4大は行くな」「女は一般職、男は総合職」という社会であれば、世の中のそこかしこに「自分より学歴も収入も上」の男性がいたでしょう。
現在は女性の大学進学率が男性と同等になり、大手企業での採用数でもほぼ半数まで上がっています。必然、「自分より同等以上の男性」は減っている。当然、基準に適う確率は下がり、パートナーが成立しなくなっています。
学歴・仕事が男女平等に近づく中、本来なら結婚観も今流にアップデートしなければならないのですが、この点が遅れている。結果、生涯未婚率では、女性は高年収者が著しく高く、逆に男性は低年収者が著しく高いという非対称が起きています。
男女間の見えない格差
でも、短絡的に「女の人も、相手の学歴や収入、職業、役職、企業レベルにこだわらずにパートナーを探せ」なんて言うべきではありません。昭和の結婚観がなくならないのは、今でも多くの面で、男女間には見えない格差(アンコンシャス・バイアス)が残っているからなのです。ならば、こうした見えない格差を一つずつ、取り除くことが、本当の解決策でしょう。
そう、これもアンコンシャス・バイアスという、やはり「心の問題」です。これから2回にわたりその処方箋を書いていきますが、初回は「仕事場面」での格差是正を考えます。人事制度の実務を詳細に書くので、専門外の方には戸惑いもあるかと思われますが、平易な説明を心掛けますので、ぜひともお付き合いいただきたいところです。