「面倒な世の中になった」わけではない
ボーイズクラブという言葉がある。同じノリ、似通った価値基準の男性たちの「閉じられた集団」を称して言う。気を悪くされる読者もいるかもしれない。けれど日本は議会ばかりでなく、官民を問わず意思決定の場が「ボーイズクラブ」になっている。問題発言を生む原因の一つは、そこにあると私は考えている。
ボーイズクラブ内で話しているうちは「問題発言」が生まれない。なぜなら、誰も問題だと思わないからだ。やや違和感を抱く人がいたとしても、1人、2人だと多勢に無勢で「気にしすぎだ」とつぶされてしまうかもしれない。
そうしてスルーされた発言が集団の外に出たとき、大きな問題になる。同質的な集団には必ず盲点が生まれ、それが問題発言につながる。
問題発言に擁護的、同情的な人から、しばしば「面倒な世の中になった」という声が聞かれることもある。だが世の中が面倒になったわけではない。問題発言に傷つき怒る人たちは、ずっと昔から世の中にいた。ただ伝えるすべがなく「いないこと」にされていただけだ。SNSの普及などによって、問題発言とその背景にあるものが可視化されやすくなっただけなのだ。
政治家は「50歳以上の男性」がほとんど
政治がボーイズクラブとなっている現状は、数字に表れている。
総務省や内閣府男女共同参画局の調査(2021年現在、参議院のみ2022年現在)によると、議員に占める女性割合は衆議院が9.7%、参議院が23.1%、都道府県議会が11.8%、市議会全体で16.8%(政令指定都市の市議会は20.7%)、町村議会が11.7%。大半が男性である。
さらに年齢構成を見ると、都道府県議会、市区議会、町村議会とも、最も多いのが「60歳以上70歳未満」の議員。50歳以上の占める割合は都道府県議会が7割、市区議会が8割、町村議会はおよそ9割となっている。国会議員は男性の平均年齢が57.0歳、女性が54.5歳だ。
総務省調査(「地方議会議員の概況」)
内閣府調査(「男女共同参画の最近の動き」)
都市部も地方も政治家は「50歳以上の男性」がほとんどであり、多様性とは程遠い。言い換えれば、いつ、どこで「問題発言」が起きてもおかしくはない。
さらに、低迷する投票率も「ボーイズクラブ」化に拍車をかけている。
総務省調査によると、2019年時点の投票率は都道府県議選が44.02%、市区町村議員選が45.16%。2021年10月の衆院選は55.93%、2022年7月の参院選は52.05%だった。
総務省調査(「目で見る投票率」)
総務省調査(「国政選挙の投票率の推移について」)
この関心の低さは、選挙後、議員が何を語りどう行動しているかチェックする目が少ないことも意味している。チェック機能が働かなくなり、おかしな発言をしても気づかれず、批判が起こらない。
問題発言は、そういうなれ合いの中から生まれる側面もあるように思う。